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2005年9月 7日 (水)

天皇の姓(family name)

 天皇に姓(family name)がないのはなぜか。簡明な説明は、柳田國男の『先祖の話』 にあります。古代日本における姓(family name)とは、天皇が臣下に下賜するものである。したがって、姓(family name)が天皇の臣下であることを示すものなら、天皇に姓(family name)があっては論理的に矛盾する、というわけです。光源氏も、臣籍に降下するとき源氏姓を父天皇から賜りました。

ただ、この姓(family name)というシステムは人類史的にみて実はマイノリティにすぎない。たとえば、プラトンに姓(family name)はありません。古代ギリシア人に姓(family name)はないのです。それから、現代の東南アジアや太平洋諸島のひとびとも、本来、姓(family name)を有していません。ただ、それらの国々も近代化のなかでやむを得ず姓らしきものを名乗るようになっているだけです。

 要は、古代中国や古代ローマを除いて、人類史的に姓(family name)は特殊な制度であると考えると、先の天皇の姓(family name)の問題に少し異なる側面が見えてきます。つまり、縄文人あたりまでは、人的にも文化的にも東南アジア、太平洋地域の強い影響下にあり、一般に姓 (family name)が無いのが普通だった。そこに輝ける古代中国の文明のヒト・モノが流入する。すると、姓(family name)は聖別の徴であり特権となる。それを「 gift 贈与」する主体は、当然、それを授与されるものたちより、圧倒的に、力、聖性を兼ね備えることとなる。

 もともと、姓(family name)のないところに、帝政中国から姓が入ってきて、臣下にどんどん姓を下賜しているうちに、自分だけ姓が無い、ということになっているのが現在の、天皇に姓(family name)がない、ということだろう、というの私の現在の見解です。

 日本が人類学的に、父系か母系かというと、どうも双系らしく、それは、東南アジアから太平洋諸島にかけても同じようなので、姓(family name)のないことも、日本文化の基層にそれらの地域との共通点を考える一つの傍証といえるでしょう。

*参照
1)天皇の姓( family name) (2)
2)この問題に対するまとめ。是非、参照を乞う。
国制と名前(name)

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