戦前の小選挙区制
戦前にも小選挙区制はあった。1889年の衆議院議員選挙法から、初めて小選挙区制が採用され、1900年には大選挙区制中心に変更されたが、1919年に原敬内閣が小選挙区制を再び導入。その後の総選挙で政友会は圧勝。原敬による貴族院取り込み工作も功を奏し、衆貴両院の支持を得て安定政権を樹立した。
それもつかの間、1921年に原が暗殺され、政局は再び混迷。あと、いろいろあって、1925年に、治安維持法とともに普通選挙法が成立し、このとき1選挙区3~5名の中選挙区となる。そして、これ以降1932年の五・一五事件までが、いわゆる「政党政治」の時代であり、政友会,民政党による二大政党制のもとでの政権交代が実現する。これが、衆議院の第一党が政権を担当し,その総辞職後は第二党に交代するという《憲政の常道》なわけだ。
つまり、大正デモクラシーに乗って原敬内閣は成立し、原内閣によって小選挙区制は成立した。しかし、その後の戦前政治の精華(?)である、かりそめの《憲政の常道》=《二大政党制》は、中選挙区制の下で機能していた。
大事な歴史的事実は、日本における《二大政党制》での政権交代は、中選挙区制の下でのものであり、英国のような小選挙区制下ではなかった、ということである。ここらへんは、日本の近代政治史に馴染みのある者も、勘違いしている可能性は高いのではないか。
上記の戦前《二大政党制》も、政権が交代するたびに、一介の警察署長の首まですげかえられたらしいから、その功罪も慎重な検討が必要と思う。
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コメント
OHTAさん
「有権者はなめられたものです。」
郵政選挙で、小泉氏にあれだけ議席を与えるのですから、なめられても無理はないですね。有権者自身がこの何年かで成長できたかどうか、です。
投稿: renqing | 2008年6月21日 (土) 10時12分
私どものブログでわざわざコメントいただきありがとうございます。
福岡政行氏は当時、生前の石川真澄氏と、『世界』で選挙制度改革をテーマに対談していたんですね。
その内容が石川氏の岩波ブックレットにも転載されていて、先日読んだのですが、福岡氏は完全に論駁されていました。
なにしろ、政府が選挙制度審議会を主催し、審議委員にマスコミトップを抱え込んでいるのですから、ああなっても当然だったのでしょうね。
さて、自民は今度、供託金没収ラインの引き下げを狙っているようです。共産党よ候補を立てて、民主・共産の分裂選挙をもう一度、ですか。
有権者はなめられたものです。
投稿: OHTA | 2008年6月20日 (金) 20時27分
OHTAさん、再びどうも。
既に、OHTAさんの小選挙区批判の詳細な記事は読ませていただいております。綿密で当を得た批判だと思います。近日中にお邪魔します。
投稿: renqing | 2008年6月14日 (土) 09時38分
renqingさん
私が提唱している中選挙区比例代表併用制の記事もご紹介します。コメントいただけると幸いです。
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
投稿: OHTA | 2008年6月13日 (金) 15時10分
OHTAさん、コメントありがとうございます。
ただ残念なことに、TBがいまだされておりません。うまくいかないようなら、コメント欄にてご指摘ください。
投稿: renqing | 2008年6月13日 (金) 02時14分
「小選挙区制神話」については、故石川真澄氏などが、選挙制度改革にすりかえられた当時の政治改革論議の際に指摘されていました。
小選挙区制の問題点をまとめた記事を書きましたので、トラックバックさせていただきます。
投稿: OHTA | 2008年6月12日 (木) 22時40分
同様に、この時代は一時的に資本家が企業家精神をもって経済活動をした時期でもありました。
私のブログのブックマークに勝手に入れさせていただきましたので、ご報告申し上げます。
投稿: takeyan | 2005年10月 3日 (月) 08時29分
トラックバックを有り難うございます。。
素晴らしいブログですね。
今後とも宜しくお願い致します。
投稿: 大滝三千夫 | 2005年9月29日 (木) 23時46分