9/29東京高裁、靖国判決コメント(1)
表題の判決文の概要は、本blogの2005.11.03の記事を参照して戴きたい。最高裁HPからアクセス可能な文書を転載してある。念のため。
以下は、この判決文に従った、素人なりの整理である。諸賢に問題点等をご指摘戴ければ幸いである。
1)第3当裁判所の判断 2(2)において。
a. 靖國神社は宗教上の活動をする施設である。
b. だから、仮に参拝が内閣総理大臣の職務行為なら、
c. 憲法第20条第3項に抵触する可能性が高い。
2)第3当裁判所の判断 2(2)ア において。
a. 平成13年8月13日に参拝したのは、内閣総理大臣の職務行為として誤解されるのを避けるために、15日から変更した。
b. 平成16年4月7日記者団に対して,また,同17年5月20日に参議院予算委員会において,自分で私的だと言っている。
ただし、
c-1. 平成13年4月18日の自民党総裁選の討論会で、首相に就任したら8月15日に必ず参拝する、との発言した。
c-2. 平成15年1月28日の予算委員会において,本件参拝について,自分が約束したことであり,8月15日に参拝することが公約であることのように発言した。
c-3. でも、参拝行為そのものは、私的な宗教上の行為、ないし個人的な立場で行った儀礼上の行為だから、
d. 内閣総理大臣の職務行為と見ることはできない。
3)第3当裁判所の判断 2(2)イ において。
a. 平成13年8月13日参拝行為中の、本殿に昇殿して戦没者の霊を拝礼した宗教行為は、個人的な信条に基いた宗教行為である。
b. 純然たる私的行為であるから、憲法第20条第1項の信教の自由の範疇に属する。
c. 献花代3万円も私費。
d. a+b+c、から上記行為は宗教行為だが、総理大臣としての職務行為とはいえない。
4)第3当裁判所の判断 2(2)ウ において。
a. 「献花 内閣総理大臣 小泉純一郎」の名札のついた献花一対を本殿に備えさせている。
b. だけど、献花代は私費である。
c. したがって、a+bより、個人的な信条に基づく私的行為、or 個人の立場で行われた儀礼行為である。
d. そのうえ、玉ぐし料は、公費私費ともに支出されていない。
5)第3当裁判所の判断 2(2)エ において。
a. 参集所において「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳した行為も,個人として記帳するに当たって肩書きを付しただけ。
b. だから、この行為も,個人的な信条に基づいて行った私的行為、or 個人の立場で行った儀礼上の行為である。
6)第3当裁判所の判断 2(2)オ において。
a .参拝に際し,靖國神社への往復に公用車を使用している。
b. 内閣総理大臣秘書官及びSPを同行させている。
c. しかし、これは内閣総理大臣の地位にある者が公務の完了前に私的行為を行う場合に必要な措置である。
d. 確かに、靖國神社への往復に限っていえば内閣総理大臣の職務行為である。
e. しかし、そのような措置が執られたとしても、参拝を行った一連の行為が全体として内閣総理大臣の職務行為として行われたことになるとまで言えない。
7)第3当裁判所の判断 2(2)カ において。
a. 本件参拝の時期と政府が主宰する行事との関係についてみると、
b. 平成13年8月15日に全国戦没者追悼式が実施された。
c. しかし、本件参拝8月13日だから、政府の主催する全国戦没者追悼式と一体性を有しないのは明らかだ。
◎結論
1.同月13日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為は、
2.被控訴人小泉の判断,意思(本人が私的であると認識し、意思的に13日に参拝している)、および、
3.その宗教行為の目的,性質(個人的な信条に基づく宗教上の行為)、および、
4.政府の主催する公式行事との関係等の客観的状況(「戦没者を追悼し平和を祈念する日」の行事として政府によりその実施が決定されていたものではないこと)から、
5.上記の行為のうちに内閣総理大臣の職務行為として行われたものがあるとはいえず、
6.参拝は,宗教上の行為であるか,又は個人の立場で行った儀礼上の行為であるというべきであるから、
7.いずれも個人的な行為の域を出るものではなく,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものであるとは認められない。
8.したがって、平成13年8月13日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為は,これらを一体の行為としてみても,また,個別の行為としてみても,いずれも国家賠償法第1条第1項所定の「公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて」には当たらないものというべきであるから、控訴人らの請求は,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものであることを前提としているので、理由がない。
9.なお,公権力の行使に当たる公務員の地位にある者が専ら自己の利を図る目的で職務上の地位を利用してあたかも公務員の公権力の行使に関する職務行為であるかのように装い,その結果,公務員の上記職務行為であると誤信した者に損害を与えた場合等にも同項に基づく責任が肯定されることがあり得るが(最高裁昭和29年(オ)第774号同31年11月30日第二小法廷判決民集10巻11号1502頁参照)、
10.靖國神社への往復に公用車を使用し,秘書官及びSPを同行させ,内閣総理大臣の肩書きを付して記帳し,献花をし,参拝を行ったことによって,上記のような場合に当たるということはできないから、
11.本件参拝が内閣総理大臣の公権力の行使に関する職務と法的関連性を有するものとはいえない。
12.控訴人らは,被控訴人小泉が本件参拝の前後を通じて私人としての参拝と評価されるような配慮を全くせず,「公人としての参拝」であるかのような言動を取り続けたのであり,近時の被控訴人小泉の発言は中国や韓国との関係が悪化した状況を踏まえて関係改善策としてされたものであるにすぎないなどとし,これを理由に,本件参拝が私人の立場で行われたものであることを否定するが、
13.本件参拝が、自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為、or 個人的な立場で行った儀礼上の行為であるから、いずれも個人的な行為あり、したがって,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものとはいい難い。
14.したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。
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