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2005年12月14日 (水)

exod-US氏へのreply

独裁者の支配から離脱・独立した分派グループの地上天国その後

 下記は、exod-USさんの上記記事に付けたコメントに、exod-USさんがreplyしてくれたので、それへのreplyを上記blog上のコメント欄に書こうとして、長すぎて拒絶(-_-;されしまったので、本記事としたものです。exod-USさんの記事、およびreplyにご関心の向きは、上記記事へ飛んで戴ければと思います。

コメント開始
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 exod-USさん すみません。少し寝不足気味の頭で、中途半端なことを書き散らしてしまい、話を拡散させてしまいました。(-_- 整理しますとこうです。

1)ALTO、XEROX、PARC
 これはご指摘のように経営的観点からの評価です。当時のXEROX経営陣は、PARCのいわ
ばパトロンだった。しかし、PARCが生み出したALTOは、ペーパーレスの世界、電子文書の世界の先駆けになるのではないか。だとすれば、ペーパードキュメントの企業であるXEROXを逆に窮地においこむのではないかと判断し、ALTOの製品化に消極的だった。そのため、嫌気のさしたPARCのメンバーの一部はAppleに移った。で、そのAppleからPCの文化が誕生した。というのが私の理解です。ですから、当時のXEROXが、自らの市場である、Documentの世界をペーパーから電子上の情報まで、拡張できたら、今頃、ソフトもハードも握った巨大企業になっていたかもしれない、ということです。

2)J.S.Mill のモデル
 これは、Millの“On Liberty”の議論を私が勝手に拡大解釈したものです。彼は、神は complete だが、人は incomplete だから、人間のいう正しさはhalf-truthに過ぎない。しかし、それが人間のマイナスではなくて、人間が常に成長していける証拠なのだ、という、竹内外史の不完全性定理解釈ばりの議論をしていて、それを敷衍してでっち上げたのが、私の half-truth knowledge theory です。別にたいそうなものでもないのですが(-_-;。書いた論文があるわけでもなし。

3)渡辺慧
 これも私の一知半解です。彼の主著、
・Watanabe, Satoshi“Pattern Recognition”J. Wiley(1985) 0471808156
・Watanabe, Satoshi“Knowing and guessing”J. Wiley(1969) 0471921300
の二著とも読んでませんし。読んだのは、
渡辺慧『認識とパタン』岩波新書1978
渡辺慧『生命と自由』岩波新書1980

 他の、論文というよりエッセイ様のものをいくつか、です。ただ、それから見ても、渡辺の科学哲学者としての独創性は窺い知れます。渡辺はIBM時代、ウィーナーと面識があって、『サイバネティックス』に論文が引用されている唯一の日本人でもあります。岩波新書はどちらを読んでも面白いですよ。

4)普遍者論争と言語
 他の動物では、その生命維持活動に“言語”は使用してません。しかし、人間はその生命維持活動と言語使用は不即不離です。つまり、人間は動物のように、身体機能を分節化して世界に適応しているのではなく、“環境世界”を言語によって分節化してようやく生きていると思います。ま、時々、間違えた分節化もしちゃうのですが。
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コメント終わり

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コメント

ま、相互研鑽ということで。私も政治向きの事だけ書いていると、欲求不満になるので、馬場さんのとこへ刺激を頂きにあがりますです。

投稿: renqing | 2005年12月15日 (木) 13時36分

私の部屋ではついにゴキブリも絶滅したようですが,ずーと長いバトルの歴史があるので,ずいぶん観察しました(向こうもこちらを観察してますが).卵を産むときは生活の本拠からずっと離れたところに産み付けるとか...私は最初ゴキブリは何か地図みたいなものを持っているのか?と思ったのですが,そうでないということはすぐわかりました.通路になっているところをきれいに水拭きすると効果があるとか...流しの裏が本拠だというのはわかるので(他に隠れる場所はなかった)流しを引っ張り出せばそれまでなんですが,そこまでやるかなぁ?という気持ちもあってかなり長い期間共棲しました.ずいぶん殺したので,供養か何かしなくちゃなりませんね.しかし,彼らもしぶとくて,私が死ぬのを待ってるんじゃないか(死ぬのが近いと思って)と思うこともありましたし...

コンピュータは(大脳を代替する)外部記憶以外の何ものでもないし,道路標識なんてものもありますから,我々の方法とゴキブリのやり方とそんなにかけ離れているというものでもないと思います.そういう視点で見ると統合したネットワーク(インターネット)というのは地球大の大脳みたいなものと考えることもできるわけで...その潜在的ポテンシャルは巨大なものがあります.

私が最終的にほんとにやりたいのは人工頭脳です.人工知能(AI)ではなくArtificial Brainですね.とうてい間に合わないと(持ち時間が)思って半ばあきらめてますが...私はほとんど本を読んでないので時々ここに寄らせて頂いて勉強させてもらいます.

投稿: 馬場英治 | 2005年12月15日 (木) 07時10分

馬場さん コメントありがとうございます。馬場さんのコメント、特に、(4)は非常に面白いものです。ですから、貴blogで記事化されることをお勧めします。blog記事のコメント欄に埋もらせてしまうのはかなり惜しい。そして、私もその刺激で、久しぶりに科学哲学系のことをちょっと書きたくなりました。ですので、私は記事化します。馬場さんもお時間のあるときに記事にしておいて戴ければ助かります。お互いにTBで相互参照が楽になりますし。互いのhalf-truth を公開することで、第三のhalf-truthを誘発することが出来る。その知の相互誘発プロセスが、時の篩(ふるい)にかけられ、事後的に人類全体の知の成長を生み出す、というのが、私の理論的見通しそのものですから。

投稿: renqing | 2005年12月15日 (木) 02時40分

ご丁寧なレスありがとうございます.
(1)なるほど.非常に明快な説明ですね.うなづけます.これまで誰もこんな解り易い説明をしてくれた人はいなかったような気がします.仮にXEROXの経営陣がそのような理解を持っていなかったとしても(というよりそのような理解を持っていれば,違う道を進んでいたかもしれませんが),直感的にこの方向は自分たちの拠って立つ基盤を掘り崩すものだと感じて本能的に避けたということは考えられますね.
(2)この部分是非rengingさんに展開して頂きたいですね.(期待してます!) 排中律の成立しない世界を扱う直感主義論理とも少し関係するような気もします.ミルの自由主義と経済的自由(市場)主義(ネオ・リベラリズム)はどこかどう違うのか?など...
(3)渡辺慧はまったく読んでませんが,確かにおもしろそうですね.マークしておきます.
(4)「言語」の定義によりますが,動物同士ないし,人間と動物でコミュニケートすることは可能であるという意味で,私は動物(もしかすると植物さえ)も言語を持っているのではないか?と考えているのですが,私は動物たち(たとえば昆虫)が知識を外部に蓄積する方法に興味を持っています.どういうことかと言うと,たとえばゴキブリ社会には明らかに「道」のようなものがあると考えられますが,これは彼らの神経中枢(内部)に「地図」を持っているのではなく,外部世界に地図情報が埋め込まれているような形式になっています.アフォーダンスという考え方がありますが,このような外部知識相と多少関連があるのではないかという気もするのですが...

投稿: 馬場英治 | 2005年12月14日 (水) 15時37分

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