キミは人糞を見たことがあるか?(+追記)
無論、他人(ひと)のを、である。
自分のものは毎日眼にするに決まっている。ん?、そんなものまじまじ見ない、と言われる。そうかも知れない。しかし、象徴、じゃない、省庁でもない、小腸の空洞感を認識するため、私は必ずそのつながり具合を確認する。ん?、私は何を語ろうとしているのか。ここは断腸の思いだが、先を急ぐことにする。
告白すると(何をだ!)、私はこの歳になるまで、我慢できず公衆便所等に駆け込んで先客の忘れ物を目撃するアンラッキー(これを“ウンのツキ”と言う)以外、他人様のものに外出先で遭遇したことはなかった。
あ、それから、ちょっと遅れましたが、48時間以内にカレー・ライスでも食べてみようっかなぁっとか考えている方、この先はお読みにならないで下さい。しばらく堪能できなくなります。にも関わらず、既に戻れないところまで読み進められてしまった方は、あきらめてご一緒にお付き合い下さっても結構です。
ということで、今を遡ること4日前のこと。私は仕事上の忘れ物を取りに一つのオフィスへ向かった。私の仕事はサテライト・オフィスに跨(またが)っているのだ。その小さく、お世辞にも美しいとは言えないビルの階段をいつものように一段一段のぼっていった時、それはあった。
ギョッとした。が、最初それは嘔吐物だろうと、私の大脳神経回路は通常処理をした。なぜならそこは雑居ビルで、カラオケ・スナックなども入居しているからである。そこで、反射的に酔っ払いの不始末かと判断した訳だ。
その物(ぶつ)は階と階の中間の踊り場にあった。私のオフィスは一つ上の階にある。数秒間そこに立ち尽くしたが、それでも今私は先を急いでいた。もう一つのオフィスで人と待ち合わせているのだ。幸い人ひとり通れるぐらいの余裕はあった。で、その物(ぶつ)について異なった認識も脳裏に浮かんだのだがそれを振り払い、とにかく階上のオフィスへ向かった。オフィスのドアの前に来て、斜め下を見おろすと、当然のごとく物(ぶつ)はその勇姿を四方へ自らを主張したままだ。私の幻想なんかではなく、確かなリアリティを持っていることは既に明白だった。そこで、私は一般社会を構成する一人の人間として、その正体を確認する義務を持っているのではないかとしばし再考し、嫌ではあったが、現場へ舞い戻った。
物(ぶつ)は、その色あいといい、サーフィスといい、大腸において完全に水分を吸収される前の、若干柔らかめの、人のものだった。もう見紛う訳にもいかなかった。ただ不思議なのは、人のものならかなり強烈にあるはずの臭いがないのだ。私が第一印象で嘔吐物とみなしたのも、それがなかったためだ。よく見ると(今思えばなぜそこまで観察したのか自分でも不思議だ)、その物(ぶつ)のこんもり振りは、北極の海に浮かぶ巨大な氷の壁のようであり、その周辺には水分が4、50cmにじみ出ているではないか。
ウーン、とすると、その物(ぶつ)は水分を含んだ段階で体外へ出され、当初はひどい臭いを発散していたのだろうが、そこから水分が何十センチかにじみ出るほどに時間が経過していたため、臭いだけはいわゆるウン散霧シュウ、じゃないや雲散霧消していたのだ。私は、その物理的存在感と無臭という矛盾した現象に一定の結論を下した。
これで気持ちも少しは晴れ、来客と会えるというものだ。私はなぜか納得し、ビル管理会社に連絡することは後に回し、忘れ物をピックアップして、もう一つのサテライト・オフィスに急いで向かったのだった。
一仕事終えたあと、電話に向かい管理会社へ通知し、アージェント・レベルの撤去を依頼した。私にとってこの件はこれでおしまいだ。
一日後、当然、仕事なので同じ場所を通過したが、確かにあったあの物(ぶつ)は綺麗サッパリ、跡形もなくなくなっていた。とにかく、私がそれを片付ける羽目にならなくて良かった。これもご先祖様のご加護と改めて感謝したことは言うまでもない。
《追記》この記事を書いてから、つらつら考えていたら、そういえば紙が散乱してなかった、ということに気がついた。ウ~ン、大をした後、その出口はどうしても物(ぶつ)で汚れるため、いかなるときであろうとも、紙系統で拭わないといけなかろう。しかし、今思い返しても、一枚も紙類はなかった。どうしてそんな不思議なことが可能だったんだろうか。恐らく、拭わなかったか、とっさにハンカチ様のもので拭いてしまったのか。いつかこの謎が解くことが出来たら、再び記事化することをお約束しよう。
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