鄧麗君、宋詞を歌う
古来、中国では、「漢文,唐詩,宋詞,元曲」と言慣わしてきた。つまり、漢朝ならば文、唐朝ならば詩、宋朝ならば詞、元ならば曲が、それぞれの時代を代表する文芸だと。
唐詩は、厳格に韻律を守り、内容も風雅や感情を格調高く謳い上げる韻文。宋詞は、日本語の「歌詞」という語彙を見ればすぐわかるように、実際に楽器の調べに乗って歌手が唄うもので、題材もいわば日常の近辺にある“俗”なるものを、韻律にこだわらず自由に綴ったものだ。宋時代の流行歌の歌詞である。
その一千年前の流行歌の歌詞を、アジアの歌姫、鄧麗君(テレサ・テン)が再び甦らせたものが↓のアルバムである。原盤は1983年、香港で作成され、その年の中国での賞を総なめしている。
鄧麗君(テレサ・テン)「淡淡幽情」1995年
トラック
1 獨上西樓
2 但願人長久
3 幾多愁
4 芳草無情
5 清夜悠悠
6 有誰知我此時情
7 臙脂涙
8 萬葉千聲
9 人約黄昏後
10 相看涙眼
11 欲説還休
12 思君
アルバム情報
発売元:ニュートーラス / 発売日: 1995年7月26日 / 盤種: CDアルバム / レコードNo: TACL-2400 / 価格(税込): 3059円
CDジャーナル誌の作品評↓が、このアルバムの持つ価値を論じて余すところがない。
「・・・、カラオケ・ファンおなじみのテレサとはまるで異なる、彼女の「本領」が発揮された作品だ。・・・。テレサ・テンという歌手が日本では実にゆがんだ評価をされているとわかる。」
御一聴あれ。
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コメント
あじあちっくさん、どうも。
いまだ、PCが手元のないため、レスポンスがあまりよくありませんが、ご容赦。おいおい、拝見に伺います。
投稿: renqing | 2008年8月 8日 (金) 23時48分
こんにちわ。私もテレサテンのファンで、「淡淡幽情」のクラシカルな雰囲気は大好きです。私のブログで関連ビデオを紹介してますので見てみてください。
投稿: あじあちっく | 2008年8月 5日 (火) 14時51分
こんばんわ。このCD、よさそうですね。
iTune Music Storeにあればダウンロードしてみようと思って検索してみましたが残念ながらないみたい。
でもよく考えたら、詞も読みたいからCDで探すべきですね。
どうもありがとうございました。
投稿: かわうそ亭 | 2006年3月 4日 (土) 22時50分
松本さん 宋詩≠宋詞です。詩(shi)は poem で、 詞(ci)は lyrics です。実は私も知りませんでした。宮崎市定がいうのは、前者ですね。 例えば、「かわうそ亭」さんの記事も、宋詩です。↓
『宋詩選注 』
http://kawausotei.cocolog-nifty.com/easy/2006/02/__cf62.html
投稿: renqing | 2006年3月 4日 (土) 11時13分
故宮崎市定は、唐詩より宋詩をむしろ評価していましたね。唐詩は酒の詩が多く、それも質より量の酒池肉林みたいなヤケクソの宴会調で、長期不況にあった当時の状況を反映して嘆息の詩が多い。いっぽう宋詩は趣味のいい茶の詩が多く、好況を反映して明るい、とまあ乱暴にいうと、そういうことだったと思います(中公文庫「東洋的近世」)。
評価が歪んでいるのは、テレサ・テンだけでなくチョー・ヨンピルもそうです。韓国ロック界の草分けである一方パンソリを学んだり、じつは伝統に忠実で幅の広いアーティストですが、日本にその辺はほとんど紹介されてないですね(例外は石牟礼道子のエッセイ「チョーヨンピルと男寺党」ですが、これを収録したエッセイ集「花をたてまつる」〜間違いなく石牟礼さんのベストの一冊〜は、版元の葦書房が潰れて絶版)。
きっと日本は稼ぎ先、と割り切ってるんだと思います。
投稿: 松本和志 | 2006年3月 4日 (土) 09時24分