勝ちにまさかの勝ちあり、負けにまさかの負けなし(2)
好評につき、図に乗り第2弾。
釜本邦茂。日本サッカー史上不世出のストライカーと言われる。特に、ゴール右45度からの右足シュートは有名。今でも正確に打てる、とは本人の談。
釜本はヘディングも得意だった。なにしろ、1968年5月23日に国立競技場で行われた日本代表対アーセナル(イングランド)第1戦で、 長身の相手DFに競り勝ち、ヘディングシュートを決めている。しかし、身長179cm。無論、跳躍力もあったろうが、それよりも練習法。釜本は、ヘディン グの上達のため、キーパーに高く蹴り上げてもらい、最短で落下点に到達する練習を繰り返していた。こういう合理性の裏づけのある練習をしているから、身長 差があってもヨーロッパの長身DFにヘディングで競り勝つのだ。
釜本のシュートの破壊力は頭抜けていた。どのくらい強烈かというと、日本リーグの試合中、相手チームのキーパーの交代要員が底を突き、素人のFW がキーパーに入ったとき、釜本のシュートを受け損ねたその選手が手に裂傷を負ってしてしまった、というエピソードに如実に現れている。
その強烈なシュートはどのようにしてもたらされたのか。彼の優れた身体能力もあるだろうが、彼が何に意識を集中してキックしていたか、が重要だ。 キックするとき、釜本の目はボールに注がれている。相手DFにタックルされているときも、ボディコンタクトしているときも、目はボールを追い、キック、 シュートした後で、自分が倒れつつあるときでも、目はボールを追っている。
「ボールを見つめ、目でボールを追うことで、シュートの押さえが利くんですわ」
とは本人の弁である。
強烈なシュートを打つ、ブラジルのロベルト・カルロスの秘密を探った日本人スポーツ科学者の話によると、ロベカルのすごいところは、キックのとき 必ずボールの真ん中(重心)をたたいていることらしい。そのため、キックの力が無駄なく全てボールに伝わるのだそうだ。それで、無回転の重くてゆれるよう なシュートが打てるのだろう。先のブラジル戦で川口がビビッたという天才フリーキッカー・ジュニーニョのゆれるボールの理由も、キックのミートポイントが しっかり真ん中を捉えているからこそ出来るものだと思う。で、なぜ、ボールの真ん中をたたけるのか。それが釜本と同じ目の問題だと思う。おそらく、彼らも ボールミートの前、瞬間、フォロースルーの時もその目はボールを追っているはずだ。釜本のシュートも無回転でゆれるような軌道を描き相手キーパーを襲って いたのはまちがいない。
結論。天才ストライカーでさえも、シュートがうまくなるために、合理的で根拠のあるシュート練習を日ごろから重ねているんだよ。
足踏堂さんのコメントに引っ掛けて、スポーツにおける「型」の問題を書こうと思ったが、忘れなければ次回に書こう。
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