ジャパニーズ・グラフィティ
1960年代を描く、映画2本。「パッチギ ! 」(2004年井筒和幸監督)、「青春デンデケデケデケ
」(1992年大林宣彦監督)。それぞれ、一つの曲が導きの糸となっている。「パッチギ」は、ザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」。「青春デンデケ・・・」は、ザ・ベンチャーズの「パイプ・ライン」。
「パッチギ」は、京都を舞台にした、朝鮮高校生と日本人高校生の、ケンカと恋に明け暮れる物語。私が過ごした郊外の町にも朝鮮学校があり(悪ガキどもは「チョン高」と呼ぶ)、時折、公園の木々に囲まれた見えにくいところで、日暮れ前、朝鮮学校生と不良中学生どもがケンカをしていたことを思い出す。この映画、ケンカシーンはリアリスティックなため、結構残酷。そういう手加減しない即物的な描写が、突き抜けた爽快さをもたらしているかもしれない。そして、ヒロイン、リ・キョンジャ役の沢尻エリカの可憐さは特筆すべき。そのヒロインの気を引くためだけに、懸命にハングル入門書を読み、ギターを抱え、「イムジン河」を練習するケンカなんぞには縁が無い、寺の小倅(こせがれ)、主人公松山康介(塩谷瞬)。それにも関わらず、必然的に在日コリアンの世界に深く踏み込み、いつもケンカと隣り合わせになってしまう。この「ロミオとジュリエット」風の恋も、シェークスピアや「ウェストサイド物語」のような悲恋に終わらず、成就するエンディングなのがちょっと嬉しい。
「青春デンデケデケデケ」は、日本の典型的田舎というべきか、香川観音寺を舞台にしたもの。クラッシックのバイオリンを愛し、ポップスを小馬鹿にしていた主人公藤原竹良。そんな彼が、高校入学目前の至極暢気な春休みの昼寝中、ラジオから流れる「デケデケデケ」というベンチャーズ奏でる「パイプライン」に脳天をかち割られるほどの衝撃を受ける。ここから、彼のデンデケ高校物語が疾走し始める。有名無実の軽音部を乗っ取り、友人たちをアメと鞭で篭絡し、バンドに引き入れ、練習場所を苦心惨憺しながら確保し、ついには、高校最後の文化祭の大舞台で、鮮やかにかっこよく、「テケテケテケテケ」と「パイプ・ライン」をかき鳴らすのだ。この宴のあと、バンド仲間はそれぞれの道を歩み出す。そして、大学受験のために黙って早朝上京する主人公を、バンド仲間が見送るシーンでこの映画は終わる。
え?、青春につきものの恋はどうしたって? えーっと、よい場面があります。それは、夏も終わりに近づいた頃、主人公を慕う同級生の女子生徒から、家近くの海岸での海水浴を誘われ、その女の子のリードで海でのひと時を過ごすシーン。海の家もしまわれつつあるのに、残っていたよしず張りでサッサと着替えを済ます彼女に対してぐずぐずしている主人公。一泳ぎしたあと彼女のお手製の弁当で満たされても、互いに嬉しそうにするだけで、何も起こらず、時間がきたからと帰宅する彼女を見送る。素朴な青春を感じさせるよい場面でした。それと、若かりし頃の浅野忠信が出ているのも一興。
知らずに、いろいろと在日コリアンを主人公にした映画を見ることが多かったので、おいおいご紹介したい。「伽耶子のために」「潤の町」「月はどっちにでている」、等。まだ、あったかもしれないが。
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コメント
通りすがり さん、どおもー。
そうでしたぁ。つい、漱石の坊ちゃんと、ゴッチャにになりました。サンキュー、です。
投稿: renqing | 2006年12月 2日 (土) 02時43分
青春デンデケデケデケの舞台は香川の観音寺ですよ~~
投稿: 通りすがり | 2006年12月 2日 (土) 00時02分