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2006年9月 4日 (月)

少女

 そこから現われる少女は、今やはっきりとした顔をもっていた。額の上で短かく切り揃えられた髪とは対照的に、後ろの髪はしなやかに垂れて走る度に肩の上に軽々と拡がった。小麦色とまではいえないにしても、艶やかな頬はしっとりと湿っている感じで、どこか小道の肌触りを思わせた。顔をつんと上に向け、軽く肩を揺するようにして歩く癖があった。大人でもあまり持つことのないような、上質の薄い革鞄を抱えていた。白いソックスをはいた足もとには、しかしまだ子供じみた影がある。

黒井千次 『春の道標』 昭和59年(1984) 新潮社、 より

参照: 黒井千次 『春の道標 』 新潮文庫(1984)

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