「美しい国」を目指す日本の、「美しくない」記憶
文芸の世界に遊びたいと思ったとき、ふらっと伺うブログに「かわうそ亭」さんがある。だが、折に触れて、おそらく温厚な紳士(?)であろう御亭主を怒らせることがこの世にはあるのだ。
ビルマに響くニッポン軍歌
「本書ではこのような軍による民間人の徴発を「ポーター狩り」と人々は呼んで恐れていることが書かれている。男の子には地雷原を歩かせ、女の子は従軍慰安婦にする、と聞いて、もちろんわれわれは顔をしかめるわけだが、これはこの地域を支配下においた日本軍がやっていたことを真似ているだけだと言われると、心が重くなる。まったく参謀本部の低能どもはバカな作戦立案で百年国を汚しやがった。」
「己(おのれ)」が「己」であるのは、「己」についての記憶による。だから、記憶喪失は自己喪失として本人に現れる。国家が国家と自覚されるためには、その国家の記憶、すわなち歴史といかに自覚的に向き合うかによるのだ。
アベ氏が靖国神社を熱心に通うところから見ると、現在の日本は美しくないが、かつての日本は美しかった、と思っているのだろう。しかし、美醜善悪を含めて、「己」に関するすべての記憶を直視しないものは、結局、自己喪失に至るだけだろう。自己を失った国民が国家を愛せるわけがない。
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コメント
まつもとさん
つまり、言葉の政治、なんですね。それだけに、それに対抗するのは、言説=意見なわけです。今の日本、対抗言説が少なすぎます。
投稿: renqing | 2006年12月25日 (月) 12時13分
「改革」とか「美しい国」とかいう人は、できないから言ってるんでしょうね。アンドレ・モーロワではないけど「できるなら言う前にやっている」。
投稿: まつもと | 2006年12月25日 (月) 08時08分
加齢御飯さん、どうも。
こちらも、一言ご挨拶しようと思っていたのですが、コメント付け忘れておりました。
それにしても「美しい」とか「凛とした」と言い募る輩に、ろくな奴がいません。
投稿: renqing | 2006年12月25日 (月) 04時01分
トラックバックをありがとうございました。公私混同エロ人間を養殖にすえて、「美しい国」も何もないものだと思います。
投稿: 加齢御飯 | 2006年12月24日 (日) 16時54分
こんばんわ。いや、温厚どころか、最近は怒りっぱなしなんですが。(笑)
どうもありがとうございました。
投稿: かわうそ亭 | 2006年10月31日 (火) 19時16分