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2007年1月 3日 (水)

奇妙な果実、あるいは、ワクワク(3)

 「奇妙な果実、あるいは、ワクワク(2)」に事実誤認があったので訂正。そこで、

「 馬琴が「南総里見八犬伝」で、儒教という中国思想本流の影響下にありながら、処女に犬の子を孕ませるという破天荒な奇譚を構想し得たのは、おそらく日本の土壌があればこそだ。」

 と書いた。しかし、この系統の説話モチーフを《犬祖神話》といい、元来、中国華南地域の、とくにミヤオ(苗)・ヤオ(瑶)・ショオ系の少数民族の間に、「槃瓠(ばんこ)」という飼犬が戦功をたてて王女をめとり,種族が発祥繁栄したと伝えられたものだったようだ。それが『五代史』を通じて、馬琴によって大規模にインスパイアされたらしい。古代中国人が、未開民族は奇怪なことをいうわい、ぐらいの勢いで記録を伝えたものだろう。

 ただ、この《犬祖神話》も、孤立したものとは言えず、北米のイヌイット(エスキモー)の、犬を夫にした娘セドナの神話に代表されるように、北米の先住民の間に広く流布しており,類話はシベリアからも発見されているらしい。

 つまり、漢族ではないが、中国がらみであり、広く見るとベーリング海峡にも広く似た神話が分布しているので、馬琴のアイデアが日本の土壌にのみ起因するという記述には無理があった、ということになる。ごめんなさい。m(_ _)m

〔参照〕 
 以上のすべては、平凡社世界大百科事典、の諸項目からのもの。いやー、それにしてもすごい事典だ。これだけで、過去に関することなら、相当深く調べることができる。

「南総里見八犬伝」、高田衛、執筆部分。
「イヌ(犬)」、 鈴木健之、〃。
「  〃  」、吉田敦彦、〃。
「ショオ族」、長谷川清、筆。
「ヤオ族」、同上、筆。
「ベトナム」、森幹男、筆。
「槃瓠」、白川静、筆。

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