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2007年2月 5日 (月)

言葉と暴力

 今、「体罰」が熱いらしい。国立の右翼団体、文部科学省が通達を流したそうな。↓

 この件については、再論しよう。それにしても、教室内でもコミュニケーション⇔「法」の放棄を勧めるというのはどういうことか。「法の支配」ではなく、「力の支配」ということなのだろう。「この世は万事、力次第」。アベが好きそうな話だ。

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<体罰>文科省が「考え」通知へ 容認の判例も例示
2月2日21時39分配信 毎日新聞
 体罰に関する許容範囲の見直しを求めた教育再生会議の第1次報告や深刻ないじめ問題を受け、文部科学省は2日、初めて体罰の考え方をまとめ、来週中にも都道府県・政令市教育長らに通知する。居残り指導や授業中の起立指示などは肉体的に苦痛が伴わない限り体罰ではないとし、教師が用いる強制力も認める方向だ。いじめや暴力を繰り返す児童・生徒に対する「毅然(きぜん)たる指導」を支援する狙いがある。
 学校教育法は「体罰を加えることはできない」と規定。旧法務庁の意見書(1948年)でも限定付きながら、「児童に授業を受けさせないという処置は、懲戒の方法としては許されない」と退出などを否定していた。
 今回の通知は、(1)生徒指導の充実(2)出席停止処分の活用(3)懲戒・体罰の3項目について考え方をまとめた。
 体罰については「身体への侵害を与える懲戒と肉体的苦痛を与える懲戒は与えてはいけない」と従来通り禁止した。その上で、体罰か否かは「受けた側の主観ではなく、児童・生徒の年齢、健康状態、行為の場所・時間などを考え、個別のケースに応じて判断するべきだ」などと盛り込み、教師側の強制力を容認する方針だ。
 さらに、生徒をたたいた教師の行為が体罰として認定されなかった過去の判例を例示する。判例への受け止め方は現場教員の判断に任せるものの、暗に「許される体罰の範囲」を示しているとも言えそうだ。
 このほか、放課後の居残り指導▽授業中に教室内で立たせる▽清掃活動や学級当番をさせる――などは肉体的な苦痛がなければ体罰ではないとし、教室外への退出も「別途指導が行われれば、差し支えない」などと明記する。
 出席停止処分については、「粘り強い指導を行ったうえで、正常な環境を保持することが困難な場合に適用する」と従来の考え方を示し、出席停止を受ける児童・生徒用の個別の指導計画を作成するよう求める。
 会見した伊吹文明文科相は「子どもを預けられた限りは、保護者が安心できる態勢を作るようにしたい」と語った。
 教育再生会議は1月24日に発表した第1次報告で、「暴力など反社会的行動を繰り返す子どもに対する毅然たる指導、静かに学習できる環境の構築」を掲げ、旧法務庁の意見書の見直しなどを求めていた。【高山純二】
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上記、記事中にいう「旧法務庁の意見書(1948年)」が下記↓。

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児童懲戒権の限界について

昭23.12.22 調査2発18
国家地方警察本部長官・厚生省社会局・文部省学校教育局あて
法務庁法務調査意見長官回答

 本年6月16日附及び7月27日附,別紙高知県警察隊長の照会に対し,当職は左のとおり,意見を回答するから,同警察隊長に伝達方取り計られたい。

第1問

 学校教育法第11条にいう「体罰」の意義如何。たとえば放課後学童を教室内に残留させることは「体罰」に該当するか。また,それは刑法の監禁罪を構成するか。

回 答

1 学校教育法第11条にいう「体罰」とは,懲戒の内容が身体的性質のもので
 ある場合を意味する。すなわち

(1) 身体に対する侵害を内容とする懲戒-なぐる・けるの類-がこれに該当することはいうまでも  ないが,さらに

(2) 被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒もまたこれに該当する。たとえば端坐・直立等,特定の姿勢を長時間にわたって保持させるというような懲戒は体罰の一種と解せられなければならない。

2 しかし,特定の場合が右の(2)の意味の「体罰」に該当するかどうかは,機械的に制定することはできない。たとえば,同じ時間直立させるにして も,教室内の場合と炎天下または寒風中の場合とでは被罰者の身体に対する影響が全く違うからである。それ故に,当該児童の年齢,健康・場所的および時間的 環境等,種々の条件を考え合わせて肉体的苦痛の有無を制定しなければならない。

3 放課後教室に残留させることは,前記1の定義からいって,通常「体罰」には該当しない。ただし,用便のためにも室外に出ることを許さないとか,食事時間を過ぎて長く留めおくとかいうこと があれば,肉体的苦痛を生じさせるから,体罰に該当するであろう。

4 右の,教室に残留させる行為は,肉体的苦痛を生じさせない場合であっても,刑法の監禁罪の構成要件を充足するが,合理的な限度をこえない範囲内 の行為ならば,正当な懲戒権の行使として,刑法第35条により違法性が阻却され,犯罪は成立しない。合理的な限度をこえてこのような懲戒を行えば,監禁罪 の成立をまぬかれない。

  つぎに,然らば右の合理的な限度とは具体的にどの程度を意味するのか,という問題になると, あらかじめ一般的な標準を立てることは困難であ る。個々の具体的な場合当該の非行の性質,非行者の性行および年齢,留め置いた時間の長さ等,一切の条件を綜合的に考察して,通常の理性をそなえた者が当 該の行為をもって懲戒権の合理的な行使と判断するであろうか否かを標準として 決定する外はない。

第2問

 授業に遅刻した学童に対する懲戒として、ある時間内、この者を教室に入らせないことは許されるか。

回 答

 義務教育においては、児童に授業を受けさせないという処置は、懲戒の方法としてはこれを採ることは許されないと解すべきである。
 学校教 育法第26条、第40条には小・中学校の管理機関が児童の保護者に対して児童の出席停止を命じ得る場合が規定されているが、それは当該の児童に対する懲戒 の意味においててはなく、他の児童に対する健康上または教育上の悪い影響を防ぐ意味において認められているにすきない。ゆえに遅刻児童についても、これに 対する懲戒の手段として、たとえ短時間でも、この者に授業を受けさせないという処置を採ることは許されない。

第3問

 授業中学習を怠り、または喧騒その他、ほかの児童の妨げになるような行為をした学童を、ある時間内、教室外に退去させ、または椅子から起立させておくことは許されるか。

回 答

1 児童を教室外に退去せしめる行為については、第2問2の回答に記したところと同様、懲戒の手段としてかかる方法をとることは許されないと解すべ きである。ただし児童か喧騒その他の行為によりほかの児童の学習を妨げるような場合、他の方法によってこれを制止し得ないときは、-懲戒の意味においてて はなく-教室の秩序を維持し、ほかの、一般児童の学習上の妨害を排除する意味において、そうした行為のやむまての間、教師が当該児童を教室外に退去せしめ ることは許される。

2 児童を起立せしめることは、それが第1問回答1(1)よび2の意味で「体罰」に該当しないかぎり、懲戒権の範囲内の行為として、適法である。

第4問 略
第5問

 ある学童が学校の施設もしくは備品、または学友の所有にかかる物品を盗み、またはこわした場合に、これに対する懲戒として、この者を放課後学校に留め置くことは許されるか。

回 答

 盗取、毀損等の行為は刑法上の犯罪にも該当し、したがって刑罰の対象となり得べき行為でもあるが、同時にまた、懲戒の対象となり得べき行為でもあ る・刑罰は、もちろん、私人がこれを課することはできないが、懲戒を行なうことは、懲戒権者の権限に属する。ゆえに懲戒のために所間のごとき処置をとるこ とは、懲戒権の範囲を逸脱しないかぎり、差し支えなく、これについては第1問回答の3,4と同様に解してよい。

第6問

 間5のような事故があった場合に、誰がしたのかをしらべ出すために容疑者および関係者たる学童を教職員が訊問することは許されるか。また、そのために、放課後、これらの者を学校に留め置くことは許されるか。

回 答

1 所問のような、学校内の秩序を破壊する行為があった場合に、これをそのまま見のがすことなく、行為者を探し出してこれに適度の制裁を課すること により、本人ならびに他の学童を戒めてその道 徳心の向上を期することは、それ自体、教育活動の一部であり、したがって、合理的な範囲内においては、当 然、教師がこれを行なう権限を有している.したがって教師は所問のような訊問を行なっても差し支えない。ただし、訊問にあたって威力を用いたり、自白や供 述を強制したりしてはならないことはいうまでもない。そのような行為は強制捜査権を有する司法機閥にさえも禁止されているのであり(憲法第38条一項、第 26条参照)、いわんや教職員にとってそのような行為が許されると解すべき根拠はないからである。

2 前記のような訊問のために放課後児童を学校に留めることは、それが非行者ないし非行の内容を明らかにするために必要であるかぎり、合理的な範囲 内において許されるもっとも、これは懲戒権の行使としてではなく、前記のごとき教育上の目的および秩序維持の目的を達成する手段として許されるのである。 どのくらいの時間の留め置きが許されるかは、第1問回答の4に準じて考えられるべきである。

第7問

 学童に対する懲戒の方法として、その者に対して学校当番を特に多く割当てることは許されるか。

回 答

 懲戒として学校当番を多く割当てることは、差し支えない。ただし、この場合にも、懲戒権の行使としての合理的な限度をこえてはならないのであって、その限度をこえて、不当な差別待遇、または児童の酷使にわたるようなことはもちろん、許されない。

第8問

 遅刻児童を防止するため、遅刻者を出した部落等の区域内の学童に誘い合わせの上、隊伍を組んで登校することを命じることは許されるか。

回 答

 遅刻防止のため一定の区域内の児童に対し、誘い合わせて一緒に登校するように指示することは、差し支えない。もっとも、軍事教練的色彩をおびない よう注意すべきである(文部省体育局長発通牒昭20・12・26発体100「学校体練科関係事項ノ処理徹底二関スル件」参照)。
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 上記引用のソースは、資料室  児童懲戒権の限界についてである。

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