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2007年3月25日 (日)

尾藤正英『日本文化の歴史』岩波書店2000年(参照、追記)

 本を評価する場合、二つの視点が可能だろう。
①内容の価値、如何。
②著者の執筆目的とその達成、如何。

 本書は、本文250頁足らずの中に、興味深い事実の指摘、あるいは著者の見解がてんこ盛り。その意味で、①は、★★★★★(五つ星)である。しかしなが ら、 ②はどうだろう。著者は本書の目的をこう書いている。p.iv「日本の文化がいかなる性格のものであり、また、いかにして歴史的に形成されて来たのか」 と。この点につき、正直あまり要領を得ないのだ。無論、端々に記述はある。それにしても、念のため、本記事における後段の目次を読めば諸賢にも了解して戴けると思うが、《まとめ》や《総論》に該当する部分がないのである。内容が多方面、知識の宝庫であるが故に、著者の立てた「問い」を正面から論ずる章を独立させるべきだったろう。
 その意味で、②は★である。ついでに言えば、これだけの内容量、質であるにも関わらず、索引もない。編集者を煩わせても、作り込む必要があったのではないか。ただし、たとえこれらの難点を挙げ得るにしても、裨益するところ大である。買って損はない。

 私が読んで、印象深かったことは二つ。一つは町々にある「お寺」がいったいいつ頃成立したのか、という研究の紹介(p.128)。竹田聴洲氏 (1971,1975)の浄土宗寺院の研究によれば、元禄九年(1696)における6008寺のうち、実に90%が、16-7世紀の200年間に創立され ているらしい。二つ目は、正常に死没した人物が神に祀られることは誰から始まったのか、ということ。これは、豊臣秀吉の豊国大明神が嚆矢だという。

 あと、著者が徳川期の思想史研究者であることもあり、内容量の1/3が近世がらみであることは、多少バランスの問題はあるかもしれない。ただ、日本史における近世の持つ意味の再検討が必要な時期でもあるので、私としては積極的に評価できる。

 「あとがき」で、尾藤先生、西尾幹二氏に相当怒っていらっしゃる。なにゆえ激怒されているかは読んでのお楽しみ。

 さて、他にもいろいろ気になる点はあるのだが、それについては、ご関心のもたれた方それぞれに発見していただきたい。なお、同著者の、 尾藤正英『江戸時代とはなにか』岩波書店2006年、は本書のより深い論点を提示している。合わせて読まれるとさらに理解が深まるだろう。

尾藤正英『日本文化の歴史』岩波書店2000年

〔目次〕
はじめに
第1章  日本文化の源流
第2章  古代国家の形成と日本神話
第3章  仏教の受容とその発展
第4章  漢風文化から国風文化へ
第5章  平安時代の仏教
第6章  鎌倉仏教の成立
第7章  内乱期の文化
第8章  国民的宗教の成立
第9章  近世国家の成立と歴史思想
第10章 元禄文化
第11章 儒学の日本的展開
第12章 国学と洋学
第13章 明治維新における公論尊重の理念
第14章 近代日本における西洋化と伝統文化
参考文献
あとがき

下記も、御参照を乞う。
尾藤正英『江戸時代とはなにか』
尾藤正英『江戸時代とはなにか』(2)
要約 尾藤正英『日本文化の歴史』(2000年)岩波新書

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■「通史としての日本史教育の政治性2」から、ゆるくバトンタッチ。■国家・ナショナリズム論にいれるべきかどうか、まよったが、準シリーズ的様相をしめしてきたので、一応「教育現象」に分類。■尾藤正英『日本文化の歴史』(岩波書店2000年)は、いわゆる岩波新書の1...... [続きを読む]

受信: 2007年4月 8日 (日) 01時05分

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