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2007年4月16日 (月)

「タミフル」はインフルエンザ・ウィルスに効く(4/29リンク追加)

 このところ、専門外(といっても専門がある訳でもないが)のインフルエンザに関して2本の記事をこのblogへ掲載してきた。

インフルエンザに効く薬はない(リンク追加) 2007/04/14

「タミフル」は何に効くか          2007/04/15

 そして、参加するMLなどへも情報を流してきた。その記事中、完全に間違っているとまでは言わないが、少なくとも最新の情報に基づいてない不正確な情報を書いていることを、renqingなりに確認したので、ここに改めて、renqingの現在の見解を掲載しておきたいと思う。

 今回、この記事に書くにあたって実施したことは、インフルエンザ・ウィルス学の初歩と、その知識に基づく抗ウィルス薬としてのノイラミニダーゼ阻害剤の作用機序(つまり、薬としての効き方)を学ぶ事だった。

 そこで、素人のrenqingなりに理解できたところを公開して、インフルエンザに罹患する可能性のある全ての非専門家の方々向けに、インフルエ ンザに関する知識のプラットフォームを作っておこうと思う。この記事に関し、ご意見などある方は、遠慮なくコメント欄に書き込んで戴ければ幸いである。

 現時点で、renqingが言えることは、以下の2点である。

①インフルエンザに効く薬は存在する。
②「タミフル」はインフルエンザ・ウィルスの増殖を抑える効果がある。

 無論、上記の2点は「常に」「どんなインフルエンザ患者にでも」という訳ではない。そこが難しい。結論をいえば、「タミフル」について薬理学的知 識を備え、インフルエンザの治療に熟達した小児科医、内科医が使うならば、「タミフル」はかなり著しい薬効がある、と言ってよいと思う。

 ただし、副作用、特に服用後の異常行動など、に関しては、「タミフル」使用に伴うリスクを完全に排除することは、現時点では困難だと考える。なに しろ、ある意味で、膨大な事実上の“実験”結果が日本を舞台にしてようやくその姿を現し、科学的な因果関係の特定の前に、「タミフル」服用と異常行動の統 計学的相関関係をさぐるデータが、「タミフル」開発後はじめて採取可能となってきたからである。今は、その因果関係を特定も、否定も出来ない、というのが 妥当なところだろう。従って、差し迫って、インフルエンザの罹患者のご家族が判断すべきは、そのインフルエンザの症状の重さ、および緊急性と、期待される 「タミフル」の著しい薬効および副作用リスクを、どう比較考量するか、という選択になると思う。ただ、異常行動につながる肝心の副作用リスクに、まだ安心 できる一定の評価できていないことがこの比較考量を著しく困難にしている。

 例えば、そのご家族の病状が、時間がかかっても、本人の自然治癒力で直るかもしれないことと、「タミフル」服用によって、異常行動への可能性が高 まり、ビルから飛び降りてしまうかも知れない、などということを比較考量する基準が、いまのところ与えられていない。また、その患者のインフルエンザの症 状からして、かなり重篤であり、インフルエンザによる、重い後遺症や死亡もあり得る状況にも関わらず、「タミフル」服用を躊躇し、自然治癒を選択し、結果 的にひどい後遺症が残ったり、インフルエンザ症状によって死亡してしまった時、はどうするのか、というような事である。

 renqingが「タミフル」に関して、掌を返したような言を連ねるので、訝しむ方もいらっしゃるだろう。そこで、処方経験を持つ医師からのタミフルの薬効に対する強い支持を2例、匿名の患者の家族の方の、「タミフル」による劇的回復の経験を1例挙げておく。

■インフルエンザ(流行性感冒)(三原クリニック)
「受診後抗ウィルス薬を服用して、12時間から24時間以内に解熱します。それとともに全身症状も消えるのが普通です。あまりに早く症状が消えるので、治ったと勘違いして抗ウィルス薬を途中で勝手に止める患者さんがおられます。そうするとまたぶり返してきます。」

タミフルについて(鈴の木こどもクリニック)
「タミフルは、高熱を呈したインフルエンザ患者には劇的に奏効し、1日程度で熱が下がり、症状は軽快します。」
「当クリニックの対策 インフルエンザと迅速診断で診断され、典型的なインフルエンザの症状を呈する1歳以上のお子さまには、タミフルを投与します。このようなお子さまにはタミフルは著効を示し、速やかに快復し元気になるからです。」

タミフルの国家備蓄も米ブッシュの意向!?
   のコメント欄、2005.11.23 17:05のもの
「一 昨年のことですが,家族がインフルエンザにかかり,40度を越す発熱に見舞われました。すぐに医者に掛かり,発症48時間以内であったので,タミフルを処 方されました。どうせ気休めだろうと思っていたのですが,実際のところタミフルは劇的に効き,症状は翌日にはほとんどなくなりました。いつでも効くわけで はないでしょうが,劇的に効くことがあるのも確かです。インフルエンザによる死者を減らす効果があるかどうかは全くの別問題ですが,ご参考まで。」


◎インフルエンザ、および「タミフル」に関する基本知識

 ここからは、「タミフル」という、20世紀の「インフルエンザに効く薬はない」という常識を覆した抗ウィルス薬の効く仕組みを、素人の renqingが己が理解した範囲で、かつ患者になるかも知れない者にとって必要最小限のことだけに絞って、説明を試みる。順序は、1)インフルエンザ・ ウィルスの外面(そとづら)、2)インフルエンザ・ウィルスが体内でやっていること、3)「タミフル」が体内でやっていること、である。

1)インフルエンザ・ウィルスの外面(そとづら)

 このウィルスの表面には特徴的な突起(スパイク)が二つある。

 赤血球凝集素(ヘマグルチニン、HA)
 ノイラミニダーゼ(NA)

という、2種類の糖蛋白である。そして、この二つは極めて特徴的な仕事を分担している。ヘマグルチニン(HA)は、細胞に侵入する仕事、ノイラミニ ダーゼ(NA)は細胞内で増殖したインフルエンザ・ウィルスを細胞の外に発射して、他の健康な細胞に乗り移らせる仕事、をそれぞれしている。

2)インフルエンザ・ウィルスが体内でやっていること、
 ヘマグルチニン(HA)が人体の細胞に取り付くのは、(呼吸気道、等の)細胞表面 のオリゴ糖の末端にあるシアル酸に結合するからだ。まるで、スペースシャトルの宇宙ステーション建設みたいに、細胞表面に合体したウィルスは細胞内に侵入 し、その細胞の力を利用して増殖する。増殖した新しいウィルスは、当然、宿主細胞から出芽し遊離しければならない。そのままではあふれるから。これを脱殻 という。このとき、外からやってきて細胞と結合したばかりの、その近所にいるウィルスの表面や、ヒト細胞膜状の端っこにはシアル酸が存在する。すると新し いウィルス表面には、やっぱりヘマグルチニン(HA)のスパイクがあるので、それと結合してしまい、そのままではうまく脱穀できない。

 ここの登場するのが、ノイラミニダーゼ(NA)という酵素である。こいつは新ウィルスの脱穀にとって邪魔になるシアル酸を切断する。そのおかげ で、晴れて新ウィルスは古い宿主細胞とおさらばして、新たな餌食、つまり細胞表面に取り付ける、という仕組み。実にうまくできとる。こうやって、次から次 へ猛烈なスピードでウィルスは体内で増殖を繰り返すことになる。

3)「タミフル」が体内でやっていること
 「タミフル」の標的は、ノイラミニダーゼ(NA)である。「タミフル」はこのノイラミニダーゼ (NA)と先に結合してしまう。そうすると、ウィルス表面にあるヘマグルチニン(HA)とシアル酸は結合したまま。あげく、宿主細胞から離脱できないウイ ルス同士がからまったり、周囲の感染済みのヒト細胞表面にウイルス粒子が結合したままであり、効率よい再感染がおこりえなくなる。つまり、インフルエン ザ・ウィルスの増殖を抑制する、というわけ。     

◎可能性としての、「タミフル」の薬効が異常行動を起こす機序

 ここからは、ウィルス学素人renqingの全くの推測の域を出ない話なので、眉唾で読んで欲しい。「タミフル」が優先的特異的に、結合するのは ノイラミニダーゼ(NA)という、インフルエンザ・ウィルス表面にある酵素だ。しかし、酵素という種類のたんぱく質は人体のいたるところにある。当然、脳 細胞にも。すると、脳細胞内に、ノイラミニダーゼ(NA)と似た分子構造をした酵素や化学物質があれば、それと特異的にくっつく事もありうるかもしれな い。このタミフルは、分子設計という手法で作られた点も画期的であり、そのため薬品として従来の手法のように帰納的なスクリーニングにかけられていないと 思われる。設計者たちは、目的に必要な性質のみを演繹的に追い求めているわけで、脳細胞への影響は構想外だろう。こういった側面も、素人のrenqing などは杞憂してしまうのだが。

[参考サイト]
1)■インフルエンザ(流行性感冒)(三原クリニック)
 renqingがざっと見た中で、最も詳しく作用機序を説明してくれていた。

2)インフルエンザウイルス Q&A-特徴と性状-
(東京都立衛生研究所 微生物部 ウイルス研究科)
 これも概観を得るのによい。

3)タミフルについて(鈴の木こどもクリニック)
 小児科医としての治療経験から、きっぱりと「タミフル」の使用を支持している。

4)ノイラミニダーゼ阻害薬
 参考までに。

5)Neuraminidase Structure DB(理化学研究所)
 抗ウィルス剤としてノイラミニダーゼ阻害薬の戦略的重要性を、チョロッと素人にも実感させてくれる。

6)シアル酸研究会
 体内の細胞膜表面のオリゴ糖の末端に存在して、ノイラミニダーゼ阻害剤の決め手となる、シアル酸について説明している。

*下記も参照していただければ幸甚。
“旧型”インフルエンザに「タミフル」を使うべきではない(総括・事実編)

“旧型”インフルエンザに「タミフル」を使うべきではない(総括・意見編)

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コメント

saitoh410さん、どうも。

saitoh410さんの、ブログ名ってなんでしたっけ?(^^;

投稿: renqing | 2007年4月26日 (木) 01時39分

タミフルの辞書みたいですね(^^)
ブログに遊びに来ていただきましたか?

投稿: saitoh0410 | 2007年4月25日 (水) 14時54分

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