学問の唯物的基礎
以前、 Max Weber があの巨大な学問的業績を残せた要素の一つに、母方の祖父(曽祖父?)から譲り受けた遺産があることを指摘した。
日本でもその例があること知ったので、メモしておこう。
本居宣長がその人である。
彼は、富裕な商人の子として生まれた。しかし、遅く生まれた子なので、両親がすでに養嗣子を迎えていたため、実子である本人は他の商家へ養子に出される。しかし、全く商売をする気がないため、養家から(自ら?)離縁され、松坂の実家に戻る。そうしているうちに、江戸表の店を営んでいた義兄が亡くな る。この時点で家督を継ぐわけだが、彼は母の同意もあって店をたたみ、医者(「くすし」)の修行をすることに方向転換する。
その店をたたんだ時の資産が400両。その利息で生活することにしていた。 ただ、現代貨幣価値への換算があまりよくわからない。例えば、こちらの レートを使う(1両=6万円)と、400両=24百万円となる。うーん、今日日、この額では利子生活者として難しい感じはするが、当時の生活費がどのくら いかも考えないと生活実感としての価値は不明だ。ま、江戸に支店を構えているくらいの商家だから、資産は資産なのだろう。それに、宣長は後に医師修行を終えて、松坂で小児科医として立っているわけだから、利子だけで暮らしていくことは考えてもいなかったのだとは思う。
〔参考〕 子安宣邦『本居宣長とは誰か』平凡社新書(2005年) 、P.33
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