イラク・シリア国境、2007年9月6日、木曜日、午前0時6分
「・・・。
シリア国境もほとんど同じくらい混雑していたが、ずっとリラックスした雰囲気だった。人々は車の外に出てストレッチしていた。お互いに気づいて手を振ったり、悲惨な話や噂話を車の窓越しにやりとりしている人もいた。なにより重要なのは、私たちはみんな平等だということだった。スンニもシーアも、アラブ人もクルド人も・・・シリア国境要員の前では私たちはみな平等だった。
私たちはだれもが難民だった―金持ちも貧乏人も。難民はみな同じように見えた。どの顔にも独特の表情があった。悲しみの混ざった、不安を帯びた安堵の表情。どの顔もほとんど同じように見えた。
国境を越えてから数分の間、心は極限に達した。安堵と悲しみがいちどきにどっと押し寄せて私を圧倒した・・・たった数キロ、たぶん20分くらい離れただけで、こんなにもはっきりと生と死が分かれるとは。
だれひとり見ることも触れることもできない国境が、車両爆弾や民兵や殺し屋集団と・・・平和と安全の間に横たわっているなんて。今も信じるのがむずかしい。ここでこの文を書きながら、どうして爆発音が聞こえてこないのかしらとふと思ってしまう。
飛行機が頭上を通過する時に窓がガタガタいわないのが不思議だ。黒装束の武装集団が今にもドアを破って入ってきて私たちの命を奪うのではという思いからなんとか抜け出そうとしているところだ。道路封鎖や早期警戒機[レーダーを取り付けた軍用機]やムクタダの肖像画などなどがない街路に目を慣らそうとしている。
車でほんのちょっと行った先には 、こういったものすべてがあるというのに。
午前0時6分 リバー
(翻訳:いとうみよし) 」
| 固定リンク
« 忠 > 孝 | トップページ | 「啓蒙」雑考(1) »
「近現代(modernity)」カテゴリの記事
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- 自由と尊厳を持つのは、よく笑い、よく泣く者のことである(1)/ To have freedom and dignity is to be one who laughs often and cries often (1)(2023.06.05)
- 「ノスタルジア」の起源(2023.05.08)
- Origins of 'nostalgia'.(2023.05.08)
- "das Haus" as an outer shell of an isolated individual(2023.05.07)
「米国 (United States of America)」カテゴリの記事
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- 「戦後神話」:なぜ昭和日本人は米国好きか?/ The Postwar Myth: Why do Showa Japanese Love the U.S.?(2024.04.14)
- 戦後日本の食料自給率なぜ低下したか?/ Why did Japan's food self-sufficiency rate decline after World War II?(2023.09.18)
- Seki Hirono and Feminism (2)(2022.05.08)
- 関 曠野とフェミニズム(2)(2022.05.08)
「戦争 (war)」カテゴリの記事
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- イスラエルの戦争犯罪は続く・・・/ Israel’s war crimes will continue.(2023.11.29)
- いじめ、紅衛兵、内務班(2022.09.30)
- For what purpose does our country go to war?, by Akiko Yosano, 1918(2022.05.19)
- "Exoteric or Esoteric Buddhism" on the Principle of Self-Help(2022.05.02)
「Neocon」カテゴリの記事
- トランプは「覇権主義者」か?/ Is Trump a Hegemonist?(2020.06.29)
- Schmitt, Voegelin & Strauss(2016.11.16)
- 未来を予言する最良の方法は、未来を作ってしまうことだ(2)(2008.01.25)
- Himmelfarb vs. Skocpol(2007.12.04)
- 宇宙をかき混ぜちゃえ / Disturb the universe?(2007.09.30)
「イスラム」カテゴリの記事
- Two Europe(2022.12.22)
- KAHLIL GIBRAN, THE PROPHET, 1923(2021.05.26)
- 市川裕『ユダヤ人とユダヤ教』岩波新書(2019年1月)(2019.05.13)
- 平川 新『戦国日本と大航海時代』中公新書(2018/04)〔4/結〕(2019.04.01)
- 二つのヨーロッパ(2018.03.31)
コメント