Adam Smith による社会契約論批判 (Counter-revolution to the Social Contract Theory)
以下、下記からの引用。
大道安次郎「近代自然法」、新版 社会思想史辞典 新明正道編著 創元社(1961年)
、pp.116-117
(1)政府は何ら契約について考えられていないところにも存在している。
(2)かりに政府の権力を最初ある条件のもとにある人に託したとすれば、これを託した人々の服従はその契約に根拠をおくことは事実であるが、彼らの子孫はこれに何らの関係をもたない。だから彼らはこの契約を知らないし、したがって彼らはこれによって拘束される義務はない。
(3)原始契約の制定にしたがえば、彼らが国土を去るや否や彼らはもはや一国の臣民ではなく、国家に対する一切の義務からのがれるものであると宣言しうるのである。しかるに、全ての国家はなお彼らにその臣民たることを要求し、かかる行為を罰する。また契約が存するならば、その国を慕ってきた外国人は、この契約に対して最も明白な同意を表したものといわねばならぬのであるが、その国家は、外来の外国人をもって彼らの母国に対する偏愛を有するものとして、国内に生まれた自由民ほどには彼に期待をかけない。
上記は、以下の書からの、大道による要約。
Adam Smith, Lectures of Justice, Police, Revenue, and Arms, ed. by E. Cannan, 1896.
つまるところ、18世紀のスコットランド啓蒙 The Scottish Enlightenment とは、「社会契約論への反革命」の別名でもあった、ということだろう。その思想史上のコンテクストは別の機会に検討してみる。
〔参照〕権力起源論としての「社会契約説」に対する二つの批判(1)
| 固定リンク
「思想史(history of ideas)」カテゴリの記事
- Michael Oakeshott's Review(1949), O.S.Wauchope, Deviation into Sense, 1948(2024.08.17)
- Seki Hirono, Unearthing the Forgotten History of Ideas, 1985(2024.07.14)
- 関 曠野「忘れられた思想史の発掘」1985年11月(2024.07.13)
- Otto Brunner, Land und Herrschaft : Grundfragen der territorialen Verfassungsgeschichte Österreichs im Mittelalter, 1939(2024.06.08)
- Kimura Bin, "Il sé come confine", 1997(2023.12.31)
「社会契約論 (social contract)」カテゴリの記事
- 民主制の統治能力(2)/ Ability to govern in democracy (2)(2020.11.11)
- 民主制の統治能力(1)/ Ability to govern in democracy(1)(2020.11.10)
- 自動車は、ガソリンのパワーの60%を大気中へ捨てている(2019.06.25)
- 神社、demos(凡夫たち)kratia(支配)のためのagora(広場)(2019.05.25)
- 現実としての「一揆」と思想としての「社会契約」(2015.10.27)
「Smith, Adam」カテゴリの記事
- 価格を決定するものは、「需要」ではなく、「費用」である(2)/ What determines price is not "demand" but "cost" (2)(2022.12.17)
- "Exoteric or Esoteric Buddhism" on the Principle of Self-Help(2022.05.02)
- 「自力救済の原理 the principle of self-help」を巡る顕教と密教(2022.05.02)
- 佐伯啓思 vs. 猪木武徳(2012.12.31)
- マーシャルのスミス批判 Alfred Marshall's criticism of Adam Smith(2010.05.15)
「新明正道 (Shinmei, Masamich)」カテゴリの記事
- 半世紀の時の篩に耐える第一級の思想史事典(2021.09.03)
- 新明正道『社会學史槪説』1954年岩波書店(2019.11.12)
- 自然状態(state of nature)について(2)(2007.12.07)
- Adam Smith による社会契約論批判 (Counter-revolution to the Social Contract Theory)(2007.11.28)
- 自然法から自然法則へ、あるいはブルジョアジーの頽廃について/ From natural law to natural laws or about the abolition of bourgeoisie(2006.08.17)
コメント