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2008年10月15日 (水)

「冷戦」は終結した ― 米国における「銀行国有化」

 ベルリンの壁の崩壊(1989年)からほぼ20年。自由主義とは何の関連もない市場原理主義というイデオロギーで突っ走っていた米国で、財務省が金融機関から議決権のない優先株を、計2500億ドル(約25兆円)で買い取ることが決まった。

 日本の新聞は体裁を繕い、「資本注入」と称しているが、なんのことはない、掛け値なしの銀行の国有化に過ぎない。一昔なら、「社会主義」政策と呼ばれるべきものだ。

 政治上での冷戦の終結は、ソ連が歴史から消え去り、一方の冷戦当事者、米国のみ残ることで決着した。しかし、「市場」対「国家」というイデオロギー上の冷戦は、社会のさまざまな局面で継続していた。そして、「市場」機構の先端を行っている(はずだった)米金融市場において、レフェリー役の政府が、プレー ヤー(資本家)として登場し、銀行の大株主となった。また驚くなかれ、この一方で連銀が事業会社に直接貸し出しをしている。かつての日本を見るような国策金融であ る。

 ここに来て、「市場」対「国家」という虚ろなイデオロギー上の冷戦も終結したと言える。ただし、「市場」の崩壊、という結末によって。

 我々は今、改めて「国家(権力)」を、政治闘争という一面からだけでなく、「公共性」からも再考せざるを得ない歴史的局面に立たされている、と考えるべきだろう。

 このことはまた、「市場」それ自体はなんら「公共性」を生み出すことができないこと、「市場」が政治過程からのみ供給される「公共性」という、プラットフォームの上でしかその機能を発揮できないことを、自らの破綻で証明したということも意味している。

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コメント

松本さん、どうも。
このさき、いったいどのような未来が我々を待っているのか、予断をゆるしませんが、暴走し勝ちな資本主義を、社会の側に再び埋め戻す(reembed)過程は避けられないでしょう。

投稿: renqing | 2008年10月19日 (日) 10時55分

> なんのことはない、掛け値なしの銀行の国有化に過ぎない。一昔なら、「社会主義」政策と呼ばれるべきものだ。

あるいは、これからは「近世回帰的」とか呼ぶべきなのかもしれません。資本主義がテイクオフして空を飛んだ、近代の500年が例外的に長続きした好況期だったので、それが終われば、また市場と国家が未分化な近世に着陸〜ソフトかハードかは分かりませんが〜でしょう。

投稿: 松本和志 | 2008年10月15日 (水) 08時53分

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