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2008年10月23日 (木)

しっぽは犬を振らない。犬がしっぽを振るのだ。

 相場は経済の反映であり、その逆ではない。

 昨今の世界的、特にニューヨークと東京の株価狂躁曲は、見苦しい限り。実体経済が下降しているのに、株価が上がる道理はない。

 そもそもこれまでの株価が異常に高すぎたのだ。

 米国東部時間13:29(日本のいま現在)、ダウジョーンズ工業株価は、8600ドル台。大暴落しているようにも見えるが、実はこの相場、トレンド的に見れば、ちょうど10年前(1998)と同じレベルである。

 暴落前の米国株価水準にメッキがあったとすれば、その化けの皮が剥がれただけだろう。東証株価の8600円台は、米国に比べれば、若干売られ過ぎの結果で、1980年代後半のバブル期以前の数字まで戻ったことに相当する。

 今の日米の株価がそのまま維持される保証はどこにもないが、仮にこの水準でしばらく続くなら、それはバブルの調整だったという見方も成り立つだろう。それを、ただでさえ資産的に傷んでいる公的年金に東京で買い出動までさせてPKO(株価維持政策)を志向する自民政府など亡国の輩というものだ。この損で、ますます年金原資は目減りし、実質的に年金制度は有名無実となろう。

 一方、日本の場合、都市銀行も地方銀行も、かなり株を資産的に抱えている。したがって株価が昨年相場から半値になったことは、銀行の自己資本比率を急速に毀損したことが疑いないわけで、今後、銀行を通じた信用は、急激に縮小することは明らかだ。

 また、現在、ヨーロッパは、アイスランドなどの小国を先頭にしてデフォルト(債務不履行)危機の波状攻撃にさらされてる。アジアでも、パキスタンはデフォルト寸前だ。

 昨年来の原油高で、カネを溜め込んでいるはずの産油国も、原油高を前提にして今年の政府予算を組んでいるため、この一ヶ月の原油価格暴落で、政府財政(資金繰り)がかなり悪化し、実際は身動きが取れなくなっている可能性がある。

 ま、とにかく、実体経済が悪化したままで、株価が「夢よもう一度」という具合になることはあり得ないと心得るべきだろう。

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