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2009年8月21日 (金)

坂野潤治『日本憲政史』東京大学出版会(2008年)

■内容に関して
 簡単な見通しを得たい方は、後に掲げる書評1)を、ここ数年矢継ぎ早に出ている坂野氏の他の著作と関連させながら、詳しく辿りたい方は、2)をご覧戴きたい。

■なにゆえ「憲政史」?
「本書では、憲法起草運動と国会開設運動、解釈改憲論(天皇機関説)と普通選挙運動(民本主義)の双方を含んだものとして「日本憲政史」を定義したい。」
本書、序章、p.6

 書名を換言するなら、「近代日本における民主制 democracy の発達」か。

■自由、平等、国家創生
 本書に登場するトピックは、議会論、憲法論、内閣論、二大政党論、などであり、それらを巡って、幕末(1850年代)から日中戦争勃発(1937年7月)までの、具体的登場人物、運動、事件、を取り上げ叙述する。

 デモクラシーと言えば、私などは、フランス革命の標語「自由・平等・友愛」を思い出し、それらの政治的価値が、「国民」にどのようにして追求されたのか、みたいなことを考え勝ちだ(バーリン『自由論』などを読んでると余計にそう)。

 しかし、この列島の近代史80年間の経験においては、常に、国家創生、国家経営の方法論、ないしテクノロジーとして、「誰が」、「どのようにして」、「どこへ」、という「政治」をめぐる事柄と隣りあわせで、デモクラシーが問題顕在化してきた。それがこの書でよくわかる。デモクラシーが「国家」ではなく、民衆(demos)における「個人」のこととして問題顕在化したのは、おそらく全国水平社運動や労働争議、小作争議からであろう。

■「士」と「民」
 そして、この列島において、デモクラシーが「国家」との関わりにおいて登場する理由は、政治主体が、「武士」、「浪士」、「士族」によって担われることが多かったからであろう。幕末議会論も、自由民権運動も、政治主体として想定されていたのは「士」であったのだ。なぜなら、徳川19世紀以降の政治的言説は、この「士」なる人々の間で闘わされ磨かれて来たからであり、西洋主権国家群の門戸開放に対して応答責任を担っていたのも、これら「士」なる人々だったからである。「民」も、「士」化することで、主体化し得た。

 してみると、日本における憲政が日中戦争開始とともに仮死状態になったとするなら、列島近代史80年間の軍隊指揮権(統帥権)問題は、列島におけるデモクラシーの死命を制するトピックとして顕在化せざるを得ない。なぜなら、「士」の本質とは、軍人のそれだからである。そしてこれは同時に、広く安全保障問題として国家経営の中心トピックでもある。

■国家と平等
 国家経営と平等(富、人格)の観点から、19世紀列島のデモクラシー史を跡付けすることが必要だと感じる。

■結語
 後で掲げる中村研一氏の書評論文がその最後で述べているように、「古典」の誕生、と言ってよいように思う。

書評
1)今週の本棚:五味文彦・評 『日本憲政史』=坂野潤治・著 - 毎日jp(毎日新聞)
2)中村研一氏
坂野潤治「日本憲政史」 : 戦前デモクラシーにおける憲政の構造 : HUSCAP

坂野潤治『日本憲政史』東京大学出版会(2008年)
目次
序章
第一章 幕末議会論 ― 土佐要因と薩摩要因
第二章 幕末議会論と大阪会議
 第一節 大阪会議と立憲の詔勅
 第二節 議会論と憲法論
第三章 明治14年の政変
 第一節 再度の憲法論と議会論の対立
 第二節 フランス、イギリス、ドイツ
第四章 明治憲法体制の発足
 第一節 議院内閣制の敗退
 第二節 憲法第67条問題
第五章 大正デモクラシーと「憲政」 
 第一節 美濃部達吉の「憲政論」
 第二節 吉野作造の「憲政論」
第六章 政党内閣体制の展開とその限界
 第一節 統帥権と編成権
 第二節 二大政党制と国防問題
 第三節 民政党内閣と民本主義
第七章 危機の中の「憲政」
 第一節 政・民連立内閣構想
 第二節 政友会単独内閣と軍人テロ
第八章 天皇機関説的独裁か天皇主権説的憲政常道か
第九章 合法ファッショ、協力内閣、人民戦線
終章   戦前憲政史の終焉
おわりに
人名索引
事項索引

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