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2009年8月 3日 (月)

列島におけるデモクラシーの出現

「第二は、1866(慶応2)年、第二次長州征伐とともに未曾有の米価高騰の事態となり、いわゆる世直し状況下に突入する問題である。この場合、在地での豪農商層による爆発阻止の必死の調整努力がうまく機能しなかった地帯において世直し一揆が展開したのであるが、一揆が展開した地帯にしろ、展開するにいたらなかっ地域たにしろ、内包していた問題(民衆の下からの恐るべき圧力)は同一であり、全国の豪農商層は、この段階で、幕府の国内統治能力に見切りをつけたと、筆者は考えている。」 宮地正人「総論」、維新変革と日本、シリーズ日本近現代史1、岩波書店(1993年)、P.12

 私も同様な感想を持っている。徳川レジームは、倒されたのではなく倒れたのである、被治者の支持を失って。倒れざるを得なかったのである、そのレジームが歴史的使命を終えて。それは、治者・知識人層における会読の普及(前田勉)、『経典余師』のベストセラー化に象徴される、寛政の改革以降の庶民リテラシーの急速な向上(鈴木俊幸)、拡大する世論政治(平川新)、公論世界の成立(宮地正人)から、未完の明治維新(坂野潤治)、明治デモクラシー(坂野潤治)、へと滔々と流れる《民の力量の増大》という巨大な歴史変動を背景としている。この視点から、19世紀列島史を描ききる事、これが今の私の強い願望である。

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