「明治維新」を現出させたユース・バルジ(Youth Bulge)
「未解決の課題であるが、明治維新の起動力となった人物を生み出したのは、ほかならぬこの地域であり、例外なく維新に先だつ時期に人口の増大を見た地域である。人口増大と政治変革とを直接結びつけることは冒険に近いが、いくつかの媒介項を設けることによって説明が可能となるだろう。」
速水融「人口誌(Demography)」岩波講座日本通史第1巻『日本列島と人類社会』(1993)
、p.132
同書のp.130の図1「国別人口の変化(1721-1846)」を見てもらえば一目瞭然なのだが、薩長土肥が見事に黒くメッシュ(人口20%増の地域)されている。このような人口急増によって、他の年代と比べて突出して膨れあがってしまった若者たちをユース・バルジ(Youth Bulge)とG.ハインゾーン*は名付けた。
人口が急増しているこれらの地域では、若者(庶民の次・三男など)が土地に溢れ、社会的に行き場を失ってしまっている。彼らはそのまま地元にいて立ち枯れてしまうよりはと、リスクテーカー(危険負担者)となることを選択する。したがって「官軍」はこの地域の若者たちをやすやすと動員できたであろう。とりわけ長州の奇兵隊や精強を誇った薩摩軍などはそうだろう。長州奇兵隊は、維新直後の解散、脱隊騒動の大粛清で「処理」されてしまったが、最強の薩摩軍は手付かずで薩摩に帰還していたため、溜め込んでいった不穏なエネルギーは、明治10年になって西南戦争として爆発し、ここにおいてようやく政府軍の手により「戦後処理」が終わることになる。
列島の近世・近代人口動態を、こういった観点から見直してみる価値はあろう。
*参照
グナル・ハインゾーン『自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来―』新潮選書(2008)
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