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2010年3月25日 (木)

渡辺浩『日本政治思想史 ― 十七~十九世紀』東京大学出版会(2010年)(2)

 ちょいと感想など。

■第二章 武士たちの悩み

 本書p.33に、日本列島における戦国時代の終結が、ホッブズの言う社会契約によるものではなく、最強者の支配として実現したことが記されている。

 しかし、これは少々短見というべきだろう。なぜなら、『リヴァイアサン』自体には、「設立のコモン-ウェルス」(=社会契約による国家の設立)だけでなく、「獲得によるコモン-ウェルス」(=「最強者の支配が徐々に事実として国内外の平和(「泰平の世」)」、本書p.33、を獲得していく国家設立モデル)が、同時に書かれているからある
(この部分、論旨がおかしいので、下記のように書きかえる。2010/09/23)

 しかし、これには異論がある。

 なぜなら、戦国大名の合従連衡の提携関係は、ある種のツリー状態であり、これを人々は当時《一揆》と呼び習わした。これを一つの服従契約とみなすなら ば、戦国という自然状態の終息は、《一揆》と言う「社会契約」の連鎖によって生み出された「設立のコモン-ウェルス」*(→織豊政権、徳川政権)ともみなすことが可能だからである。

 本書p.53に、徳川氏による「鎖国」の主な理由としてキリシタン排除を指摘している。確かにそれもあるが、比重としては、徳川氏による外交主権の確立および莫大な貿易利益独占と、《徳川の平和》実現のための現代でいう軍備管理(arms control)の一環、という側面も同じ重みであったのではないか、というのが私の意見。

〔註〕
*世界の大思想9、ホッブズ、リヴァイアサン<国家論>、河出書房新社(1974)
 第二部コモン-ウェルスについて
  第二十章父権的および専制的支配について、p.132下段

 「獲得によるコモン-ウェルスとは、主権が、力によって獲得されるコモン-ウェルスのことである。」

なお、この点は、稲葉振一郎『「資本」論』ちくま新書(2005年) に教えられた。


〔参照〕
久留島典子『一揆と戦国大名』、日本の歴史13、筑摩書房(2001年)
②久留島典子「領主の一揆と中世後期社会」、岩波講座日本通史第9巻・中世3、岩波書店(1994)年
社会契約モデルとしての「一揆」
徳川氏権力の基本性格(2010/09/16記事)

(3)へ続く。


渡辺浩『日本政治思想史 ― 十七~十九世紀』東京大学出版会(2010年)

SBN978-4-13-033100-5, 2010年02月25日刊、 判型:四六, 496頁

読み終えた部分。

序 章 本書への招待
第一章 「中華」の政治思想――儒学
第二章 武士たちの悩み
第三章 「御威光」の構造――徳川政治体制

第四章 「家職国家」と「立身出世」
第五章 魅力的な危険思想――儒学の摂取と軋轢
第六章 隣国の正統――朱子学の体系
第七章 「愛」の逆説――伊藤仁斎(東涯)の思想
第八章 「日本国王」のために――新井白石の思想と政策
第九章 反「近代」の構想――荻生徂徠の思想
第十章 無頼と放伐――徂徠学の崩壊
第十一章 反都市のユートピア――安藤昌益の思想
第十二章 「御百姓」たちと強訴
第十三章 奇妙な「真心」――本居宣長の思想
第十四章 民ヲウカス――海保青陵の思想
第十五章 「日本」とは何か――構造と変化
第十六章 「性」の不思議
第十七章 「西洋」とは何か――構造と変化
第十八章 思想問題としての「開国」
第十九章 「瓦解」と「一新」
第二十章 「文明開化」
第二十一章 福沢諭吉の「誓願」
第二十二章 ルソーと理義――中江兆民の思想
あとがき

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