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2010年4月17日 (土)

渡辺浩『日本政治思想史 ― 十七~十九世紀』東京大学出版会(2010年)(5)

■仁斎と近松

さらに、近松の演劇論として有名な「虚実皮膜ひにく論」を紹介した『難波土産』(1738)の筆者*、穂積以貫(1692-1769)は、『論語古義国字解』という著書もある、伊藤東涯の弟子である。彼は近松と親しく、その息子は浄瑠璃作者となって、近松半二(?-1787)の名で知られる。近松の世界と仁斎学の世界は、人脈においても近接しているのである。
  渡辺同書、p.142

 仁斎と近松の関係について別の論者も指摘している。

近松がどの程度仁斎を読んでいたかは定かにはわからないが、彼が仁斎と同じ精神圏内にあったことは間違いない。
源了圓『一語の辞典 義理』**三省堂(1996) 、p.87

 仁斎は、徳川という武威の世の真っ只中に、いわば「愛の新世界 Le nouveau monde amoureux」(Charles Fourier)を構想したということになろうか。

*厳密に言うと、穂積以貫は、近松の談話を筆録した、『難波土産』(1738)の発端のみの筆者である。本体は三木平右衛門の著書。小西甚一『日本文学史』講談社学術文庫(1993) ***、p.153注(一)参照。

**小西甚一によれば、「義理とは、社会的倫理を意味するごとく理解されやすいが、わたくしだけの考えでは、戯曲の「しくみ」「すじみち」といった 表現的述語であるらしく、義理・人情というときの義理とは、別ものだろうと思われる。」小西同書、p.149、とあり、源とは、近松の「義理」解釈におい て明確な隔たりがある。

***小西同書については、下記もご参照されたし。
日本文藝の歴史的特質
日本思想の通史として(ver.2)


(6)へ続く。


読み終えた部分。

序 章 本書への招待
第一章 「中華」の政治思想――儒学
第二章 武士たちの悩み
第三章 「御威光」の構造――徳川政治体制
第四章 「家職国家」と「立身出世」
第五章 魅力的な危険思想――儒学の摂取と軋轢
第六章 隣国の正統――朱子学の体系
第七章 「愛」の逆説――伊藤仁斎(東涯)の思想

第八章 「日本国王」のために――新井白石の思想と政策
第九章 反「近代」の構想――荻生徂徠の思想
第十章 無頼と放伐――徂徠学の崩壊
第十一章 反都市のユートピア――安藤昌益の思想
第十二章 「御百姓」たちと強訴
第十三章 奇妙な「真心」――本居宣長の思想
第十四章 民ヲウカス――海保青陵の思想
第十五章 「日本」とは何か――構造と変化
第十六章 「性」の不思議
第十七章 「西洋」とは何か――構造と変化
第十八章 思想問題としての「開国」
第十九章 「瓦解」と「一新」
第二十章 「文明開化」
第二十一章 福沢諭吉の「誓願」
第二十二章 ルソーと理義――中江兆民の思想
あとがき

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