イブラヒモビッチ移籍考
結局、イブラも、アンリもバルセロナというチームにフィットせず、退団となってしまった。
二人の共通点は、CFとして得点するための能力を満遍なくもっていること。また、それぞれ強烈な武器持っていること。アンリはスピード。イブラはゴール前での高さと強さを生かしたポストプレー。そして、彼等の所属チームは、アンリやイブラの能力を最大限引き出すように彼等をCFに置きチームを編成していた。それで得点できていたわけだから十分だ。しかし、バルセロナ自体は、WCでもスペイン代表が見せていたように、FW、攻撃的MFを含めたポゼッション・フットボール。これでは、アンリが、攻守の切り替えが早いプレミア・リーグのアーセナルで見せていたようなカウンター時のスピード感は出せない。また、ゴール正面にデンと居座って、「俺にボールをよこせ。俺が決めてやる。」のイブラでは、攻撃陣が一体となってパス交換とポジションチェンジを繰り返しながら、相手DFの小さな穴を見つけてアタックするというバルサにあっては、正直居場所がない。
要するに、アンリ、イブラの獲得はそもそもチーム編成上失敗だったわけだ。なぜそんな無駄なこと(「獲得費用+年俸」と「放出による収入」を考えると大きく赤字)をするかと言えば、バルサがクラブ会員制の文字通りクラブ・チームだ、ということが関係している。バルサ(やレアル)の経営責任者は〈会長〉と呼ばれるが、彼らは、チェルシーのアブラモヴィッチ、インテルのモラッティなどのような、クラブの所有者、すなわち〈オーナー〉ではない。彼らは四年に一度行われる〈会長〉選挙で当選した人物なのだ。その会長選において投票権を有するのが会員ソシオ(socio)*というわけ。ついでに言えば、アーセナルのセスク・ファブレガスも一族郎党のバルサ・ソシオである。
で、この会長選においては、やれ「私が会長をやれば、誰それを獲得する」とか、やはり景気のよいことを言う必要がでてくる。レアルはその典型。また、現職会長でも、自分の在任期間にすごい選手を獲得して、次期の会長も続けたいとか、「あの会長のときに、誰それを獲得できた」とか、言われるために、やたらとビッグ・ネームを呼びたがることになる。アンリやイブラを「獲得」したのは、前会長ジョアン・ラポルタの《業績》だ。2008-2009期の六冠にも関わらず、エトーというバルサの戦術にフィットしているFWをわざわざ放出したのは、成功によるチーム内の空気の沈滞を破る必要があったためだが、それに代わる大物を物色した際、たまたま「インテルでやるべきことはもうない」と移籍願望をしていたのがイブラだったため、本音はビジャを採りたかったのだろうが、他に大物の玉がなく、採ったのがイブラと言う結果となった。おそらく、現場を預かるグアルディオラには相談せずに決めたのではないか。2人の冷たい関係の責任は、ラポルタ前会長に起因しそうだ。
サンドロ・ロセール新会長の下、つぎつぎと高年俸選手を放出しているが、それはラポルタを引き継いだロセールがバルサの金庫を見たらスッカラカンで、資金ショートする前に慌てて、金策に走ったというのが実態らしい**。まあ、ボージャンがスーパーサブというのももったいない話しだし、カンテラにも次々とタレントがひしめいているのだろうから、新鮮な若手がカンプ・ノウを走り回るのを見るのはむしろ好ましいことではなかろうか。
*日本にいても、バルサのソシオになりたければなれる。あなたもバルサの会長になれるかもよ。下記参照。
FCBarcelona.jp ソシオ入会申し込み
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