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2010年10月11日 (月)

渡辺浩『日本政治思想史 ― 十七~十九世紀』東京大学出版会(2010年)(番外編)

■最良の書評
 田中優子氏(江戸文化研究者)の、本書に関する書評をネット上で見つけた。管見の限りで最良のものと感じたのでご紹介する次第。

今週の本棚:田中優子・評 『日本政治思想史--十七~十九世紀』=渡辺浩・著 - 毎日jp(毎日新聞)

 私も、渡辺氏や田中氏の言われるように、徳川政治思想の生んだ最良の遺産は、横井小楠だと思う。

 しかし、徳川日本(Tokugawa Japan)の最良の人類史的遺産は、その文化の庶民性、ないし、庶民文化のクオリティの高さであろうと考える。言い換えれば、人類史的にみて、特権身分 (貴族)以外の平民身分の人々が広範に文化形成に参与した初めての事例だと思うわけ。

 それが可能となったのは、第一に《徳川の平和》、第二に《葬式仏教》の普及、第三に《かな文字》の存在、第四に徳川公儀の《文字による統治》、などによるだろう。

■葬式仏教と徳川日本人の心性(mentality)
 したがって、田中氏や渡辺氏に「儒学が江戸時代を作り上げただけでなく、日本の近代化をももたらした」とまで言われるとちょっと待って戴きたい、 となる。確かに《儒》は徳川日本人に、知的、抽象的思考のための言葉(=表現手段)をもたらした。しかし、硝煙冷めやらぬ戦国の列島人民の荒ぶる魂を鎮 め、下賤の者にまで往生(=死後の世界)を保証したのは、他ならぬ葬式仏教だったのではないか*。そもそも、徳川儒者も含めて、儒葬が普及したことなどこの列島文化史上一度たりともないではないか。

 渡辺氏の本書は、徳川日本思想史研究の、近年のおける一つのモニュメントである。一方、そうであるが故に、徳川日本における(葬式)仏教の《文明化作用》を無視するアンチ・モニュメントとしても、我々の眼前に存在しているように思う。

〔参照〕*尾藤正英『江戸時代とはなにか』岩波書店(1992年) 、Ⅲ宗教と文化、日本における国民的宗教の成立


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