刀狩りはPKOである〔徳川史①〕
戦国時代と呼び習わされる百年を超える内戦を経験した16世紀日本列島。この流血と飢餓にまみれた自然状態に終止符を打ったのが織豊政権であり、徳川氏のリヴァイアサン、すなわち「公儀」権力と、列島を覆う「一揆」という社会契約であった。
刀狩りは、現代のアフリカ諸国でも見られるような、内戦終結後の民兵組織の武装解除でありPKO(Peace-Keeping Operations平和維持作戦)であった。秀吉の朝鮮侵略は列島内の戦場という稼ぎ場を失くした兵士たちへの失対事業ではあったが、ロジスティック思考の欠落から大失敗に終わる。徳川氏は秀吉の失敗に鑑み、国内開発へ大転換した。それが全国的な二つのブーム、城下町建設と大開墾であった。その歴史的帰結は、戦時動員を解除された、人・モノ・テクノロジー・カネという遊休資源の再活用と、徳川前期のベビーブーム+経済成長で
あった。
参照
①藤木久志『新版 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り』朝日選書2005年
②藤木久志『刀狩り 武器を封印した民衆』岩波新書2005年
藤木によれば、刀狩りを民間の武装解除と評価するのも言い過ぎで、実態は身分規制を伴う武器免許制(武器管理Arms control)の一種であり、これに各種の喧嘩停止令(自力救済の禁止→法と秩序)が付加されて、豊臣の平和、徳川の平和が構築された、とされる。
③武井弘一『鉄砲を手放さなかった百姓達 刀狩りから幕末まで』朝日選書2010年
〔参照2〕私の徳川史素描が一応完結している。ご笑覧頂ければ幸甚。
刀狩りはPKOである〔徳川史①〕
平和の配当 徳川前期のベビーブームと社会の複雑化〔徳川史②〕
支配からマネジメントへ ― 啓蒙の系譜(綱吉・白石・吉宗) ―〔徳川史③〕
徳川社会の自己調整 田沼ペレストロイカから寛政「紀律化」革命へ〔徳川史④〕
「ものいう人々」の登場 大衆社会としての化政期〔徳川史⑤〕
「世界史」との遭遇〔徳川史⑥〕
公儀から公議へ〔徳川史⑦〕
瓢箪から駒 誰も知らなかった「明治維新」〔徳川史 結〕
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