日野龍夫『江戸人とユートピア』岩波現代文庫(2004年)
“謀叛人”の言葉に惹かれて、サッと目を通した。かつて、もう一つの徂徠像を提出した本だった(原本は、1977年刊)。徳川儒学史を文芸からみたものとして重要な一編。徳川思想史に関心のある向きは、読んでおかれたほうがよいだろう。
■「内面」の誕生
本書、第三編の五世市川団十郎の生涯を描いたエッセイが面白い。五世市川団十郎は仮面の人だ。それは本居宣長の生き方と通底する。ここに「内面」を有する1人の「個人」がいる、と言ってもよかろう。徳川18世紀末が、一群のそういう人々を生み出し得たということろに重大な問題が秘められていると思う。柄谷行人『日本近代文学の起源』(1980年)(特に第2章「内面の発見」)と読み合わせると得られるものがあると思う。
日野龍夫『江戸人とユートピア』岩波現代文庫(2004年)
目次
貴女流離―序にかえて
世間咄の世界
虚構の文華―五世市川団十郎の世界
“謀叛人”荻生徂徠
壷中の天―服部南郭の詩境
偽証と仮託―古代学者の遊び
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