伊藤邦武『経済学の哲学 -19世紀経済思想とラスキン- 』中公新書(2011年)
①Adam Smith の invisible hand の発想が、キリスト教ではなくストア派のマクロコスモスの考えからきていると指摘している点(本書pp.57-59)。この点は、西欧初期近代において新ストア主義が欧州を一時期席巻したことと関連するだろう。
②エコロジー思想史へのラスキンの位置づけ ←第3章1
③プルーストとラスキンを《美についての実在論》としての見る観点。また、「風景」「土地」「失われたもの」を通じた自己の回復。
つまり、デカルト的・唯我的な、内包的自我とは異なる、外延的自我の指摘 ←第3章3
④ガンジーとの関連やディープエコロジーとラスキンの相違 ←第3章4
ただ、全体としていささか散漫な印象を持った。また、著者のJ.S.ミルへの評価への違和感(ミルの停止状態論⇒エコロジストとしてのミル、への目配せの欠如)もある。
もう少し構成を練りこむ必要があったと思う。残念だ。
伊藤邦武『経済学の哲学 -19世紀経済思想とラスキン- 』中公新書(2011年)
目次
まえがき
序章 忘れられた思想家―ラスキンの時代と生涯
第1章 ポリティカル・エコノミーの歴史
1古代ギリシアの経済思想
2アダム・スミスから
3ジョン・ステュアート・ミルまで
4功利主義とロマン主義
第2章 ラスキンの経済論
1『この最後の者にも』
2ミル批判
3リカード批判
4古代ギリシア的発想の復活
第3章 「きれいな空気と水と大地」の方へ
1風景の真理と倫理
2文化と気候変動
3風景と時間―ラスキンとプルースト
4深いエコロジーと名誉ある富
あとがき
註
関連年表
索引
〔参照:弊ブログ関連記事〕
経済学の第一原理 = Pure Air, Water, and Earth (John Ruskin)
この最後の者にも
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