ダグラスの「A+B理論」再考(2)
ところで、社会信用論におけるBIの支給額についてなのですが、社会信用論では、
A+B > A
つまり、Bの部分が生産の総額と所得の総額とのギャップになると思うのですが、そのギャップ分は国民配当 (ベーシックインカム) として配当することが出来る、ということになるのでしょうか?
またそれは、経済指標で表すと、
A+B = 国民総生産 (GNI) の金額
だとすると、A = 国民所得 (NI) の金額
B = 減価償却・その他の費用
なので、Bの分の金額を、BIとして配当することができる、ということになるのでしょうか?
以上は、情報統合思念体: ベーシックインカムに財源は必要ありません、にkyunkyunさんがポストされている文です。これにつき、取り急ぎ、私なりに簡略にレスしてみます。
時間を考慮することが肝心です。例えば、
2012年 GDP=500兆円=400兆円(A12)+100兆円(B12)
だとします。2012年では、これは実現しています。つまり、この年の500兆円については生産物は完売していて、労働者の賃金も、資本家の利潤 も、資産家の利子もすべて、それぞれその懐に納まっています。ところが、翌年、労働者はすべてその所得を消費にまわしているのに、資本家、資産家ともど も、質素な生活に回帰し、個人的な消費以外に贅沢消費はいっさいしない、とします。すると、前年実現した、生産能力がほぼそのままで、労働分配率 (4/5)が不変だとすると、
2013年 GDP=400兆円=320兆円(A13)+80兆円(B13)
となってしまいます。労働人口も、資本設備もかわらないのに、2013年に実現するGDPは、100兆円減ってしまいます。これがデフレギャップです。つまり、経済の循環から、B12部分が脱漏して(資産家は消費せず前年度所得を貯蓄してしまったから)、その分、経済規模が縮小してしまうわけです。
金持ちが金を懐にいれて、出そうとしないなら、その分、政府通貨によって、経済循環に不足したマネーを注入しよう、という話になります。もともと生産能力を実現できていないわけですから、インフレにもなりません。以上、簡略ですが、書いてみました。
〔参照〕ダグラスの「A+B理論」再考
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コメント
kyunkyunさん、コメントありがとうございます。
今現在も、少しばかり忙しく、じっくり検討のうえでレスすることができません。申し訳ありません。そこで、二言、三言だけ。
《貨幣で商品は買えるが、商品で貨幣は買えない》
これが我々の眼下にある経済の本質です。この現象を、複雑系経済学者・塩沢由典は、かつて「カルビーの原理」と評してました。
どこまでいっても、基本的に、そのままでは供給(力)が需要を作り出すことはありません。所詮、需要のある分だけしか、売ること(=供給)はできない。貨幣の裏づけのある購入意思、すなわち有効需要の分だけしか、売ることはできないわけです。作るだけなら自由ですよ。売れ残りがデッドストック(不良在庫)になるだけですが。
需要と供給をあたかも対等のように、シンメトリックに描写する大学の経済学は、結局はこの不況の処方箋を出すことは出来ません。
時間を見て、別記事を書く予定です。それは国債の話題になると思います。
投稿: renqing | 2012年6月22日 (金) 05時17分
こんにちは、renqingさん。
renqingさんには、これまで幾度となくダグラスのA+B理論 (A+B定理) についてのお返事を頂きしたが、最近、龍谷大学教授の竹中 正治先生からもお返事をいただきました。
竹中先生は、ダグラスや社会信用論のことは全くご存知なかったとのことですが、頂いたA+B理論に関するお返事を読んで、もしかしたら、これはrenqingさんとほぼ同じようなことを仰っているのかもしれない… と思いました。
竹中先生からいただいたお返事はこちらになります。
http://blogs.yahoo.co.jp/takenaka1221/15976350.html
(* コメント欄のkyunkyunのコメントは、かなり的外れなので無視してください。)
以下、竹中先生のお返事の最後の部分を引用します。
「経済主体の誰かが、貯蓄超過 (マネー退蔵、あるいは借金返済) に傾斜すれば、需要と供給力のバランスは崩れ、世の中に過剰生産力が生じる。 あるいはバブル崩壊の後、経済の停滞が相対的に長くなるのも、バブル期に膨張した債務を圧縮しようとする経済主体が増えるからだと考えられる。」
「ただし過剰な生産設備を永遠に維持することは (赤字経営の持続が不可能であるため) 不可能なので、何らかの部門で過剰生産力が生じても、長期のタイムスパンではそれは最終的には調整 (淘汰、廃棄、移転など) されるはずだ。だから長期では需要と供給力のバランスは回復されるだろう。」
「しかし、ケインズが言った通り 『長期では私達は皆死んでいる』 のだから、政策的な対応 (それが金融政策によるか、財政政策によるか、または別の何かかはともかく) の余地が生じるのだと思う。」
竹中先生は、「経済主体の誰かが、貯蓄超過 (マネー退蔵、あるいは借金返済) に傾斜すれば、需要と供給力のバランスは崩れ、世の中に過剰生産力が生じる。」 と仰っていて、これはrenqingさんから頂いたA+B理論への回答と基本的には同じ様なことを仰っているようにも思えるのですが、renqingさんは、どのように思われますか?
投稿: kyunkyun | 2012年6月18日 (月) 11時28分
kyunkyunさん
コメント、サイトご紹介ありがとうございます。
折をみて読ませて戴きます。
投稿: renqing | 2012年5月29日 (火) 01時46分
renqingさん、こんにちは。
機械翻訳を通してではありますが、ダグラスのA+B理論について調べを進めていくと、この理論に対しては主に2種類の批判があることが分かりました。
特に以下のカナダの方のサイトでは、ダグラスの言葉などを引用しながら、その批判への回答と説明が詳しく書かれているようです。
http://social-credit.blogspot.com/2007/10/douglass-ab-theorem.html
http://social-credit.blogspot.jp/2011/01/quantity-theory-of-money.html
http://social-credit.blogspot.jp/2007/05/industry-income-and-prices.html
投稿: kyunkyun | 2012年5月25日 (金) 17時18分
こんにちは。
A+B理論の 「B」 について、三面等価の観点からは、まだ上手く説明出来ませんが、「Bは別の企業の従業員の所得になるので、Bというギャップは存在しない」 という批判については、ある程度説明できるようになりました。
よかったら読んでみて下さい。
http://p.tl/b-zD-
投稿: kyunkyun | 2012年4月24日 (火) 14時09分
kyunkyun さん
コメント、ありがとうございます。
少し、調べてみます。
投稿: renqing | 2012年4月24日 (火) 02時07分
ありがとうございます。
元質問を頂いていたブログ代わりに綴っているYahoo!BBSでは、かなり未熟で的外れな意見を書いてしまっていたので (恥…)、こちらと張間さんの回答を紹介させていただきました。
http://p.tl/CwtL-
投稿: kyunkyun | 2012年4月23日 (月) 16時28分