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2013年5月19日 (日)

ポアンカレ『科学と仮説』岩波文庫(1985年) Jules-Henri Poincaré, La Science et l’hypothèse(1902)

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 科学哲学の古典中の古典である。

■良薬口に苦し
 ただし、この世の中にある言説のうちで、得体の知れない宗教や怪しげな哲学議論とは異なり、《実証的》な自然科学や摩天楼のような数学体系だけを《真理》だと思い込んでいる(思い込まされている)人々には、少し苦い薬かもしれない。

■heuristicsとしての科学
 それを知るには、本書から二箇所引用すれば十分だろう。「そんな馬鹿な」と思われた方は本書該当頁をご覧あれ。

「経験はこの選択するのを強いはしないで、導くのである。経験はどの幾何学が最も真であるかということを認識させはしないが、どれが最も便利であるかを認めさせる。」本書、pp.98-99

「ユークリッド幾何学は真だというのではなく、有利だ」本書、p.116

 ポアンカレ1854-1912は、ベルグソン Henri-Louis Bergson 1859-1941(創造的進化 L'évolution créatrice)やパース Charles Sanders Peirce 1839-1914(可謬主義 fallibilism)と同じ時代精神のうちにあると言ってよい。日本のポアンカレと称すべきは、渡辺慧(Watanabe, Satoshi)1910-1993か。

※参照 野家啓一「経験批判論」1998: 本に溺れたい

 

ポアンカレ『科学と仮説』岩波文庫(1985年)
〔目次〕
訳者序文
改訳序文
凡例

序文
第一篇 数と量
  第一章 数学的推理の本性
  第二章 数学的量と経験
第二篇 空間
  第三章 非ユークリッド幾何学
  第四章 空間と幾何学
  第五章 経験と幾何学
第三篇 力
  第六章 古典力学
  第七章 相対的運動と絶対的運動
  第八章 エネルギーと熱力学
第四篇 自然
  第九章 物理学における仮説
  第十章 近代物理学の理論
  第十一章 確率論
  第十二章 光学と電気学
  第十三章 電気力学
  第十四章 物質の終わり
索引

〔註〕個人的に、ポアンカレ大明神にはとてもお世話になっているのに、彼のカテゴリーも立ててなかったし、本書のレビューも書いてなかった。そこで雑駁だが、サラッと書いておく。同じ内容を amazon レビューにも上げたので、そこのところは恐縮。

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