バベットの晩餐会 Babette's Gøstebud(1987)
たまたまGyaO!で視聴。
夜中なのに、何か食べたくなりますね。海亀がちょっとかわいそうでしたが・・・。
この映画、一つ不思議なのは、老姉妹の家が戸口は小さいのに、晩餐会ができるほどの奥行きと拡がりがあること。なにか謎です。
バベットは、パリ・コミューンの崩壊にともなう政府軍の大弾圧から逃れてきています。
それは1871年。
明治4年の廃藩置県が行われた年です。ヨーロッパは皆、近代化しているかのように思いがちですが、デンマークの寒村(ユトランド)は、江戸末期、明治初期の田舎と大して変わりはしない、ということも実感します。
ルター派等、いわゆるプロテスタントが、寒冷で食的には貧しいアルプス以北に教線をひろげるのも、Max Weber ではありませんが、この貧しさと人間の極北に屹立する《神》が選択的親和関係を結ぶのは自然なことのように思います。アルプス以南の南欧が現世拒否しないカトリック圏のまま止まるのは、あの地味の豊かさからして、現世拒否する必要がないからでしょう。
世界三大料理というと、中華料理、フランス料理、トルコ料理を指します。いずれも宮廷料理に起源を持ちます。
バベットはそのフランス料理の天才シェフという設定です。
フランス料理は、1789年のフランス革命によって、宮廷料理人たちが失業したため、パリの街中にレストランを開き始めたことがきっかけで始まりました。バベットが亡命するのもパリ・コミューンという革命ですから、革命と料理は深いつながりがあるものなのかも知れません。
日本でも、応仁の乱で、京の中心部が焼け野原になったことが、京で育まれてきた宮廷文化が日本各地へ拡散する最初で最大のきっかけでした。
日本でもそんな感じの歴史映画ができそうな気もします。
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コメント
kumage1955 さん
コメントありがとうございます。
不思議な、それでいてしみじみとした、良い映画だと思います。ただ、今こんな地味な映画を作ったらどこも配給してくれないでしょうね。
投稿: renqing | 2015年1月28日 (水) 01時03分
この映画を観たのも、もう二昔以上前になりますね。内容が素晴らしかったのでしょう、よく覚えています。原作のデネーセンも一級の作家だとおもいます。観客は、いつの間にか女料理人に加担させられ、村人達が彼女の料理に驚く度に、「様あ見ろ」などと云いたくなるよう仕掛けられていましたね。地味かも知れませんが、映画好きでまだ観ていない人には、ぜひとも観て欲しい作品だとおもいます。
投稿: kumage1955 | 2015年1月27日 (火) 19時13分