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2014年6月23日 (月)

樺山紘一編著『新・現代歴史学の名著』2010年中公新書

本書はブックガイドである。編者樺山氏が1989年に刊行された同氏の手になる前篇『現代歴史学の名著』との重複を避け、新たにご自分でチョイスした現代歴史学の名著リストということになる。

その前篇の採録書リストは、本記事の最下段に掲載しておいた。関心のある方はご参照頂きたい。

樺山氏によると、前篇での各項目の執筆は当時の若手歴史研究者たちに依頼したが、本書では原著の邦訳者あるいは監訳者、邦書ならその学統にちかい研究者に執筆依頼し、内容・意義の紹介だけでなく、その客観的な学問的評価にも及ぶよう懇請したとのこと。確かに「あれ?」というのも含まれているので、ヨイショ的内容では困るのは当然か。

未読で読書欲をそそられたのは、
ゲイ『ワイマール文化』1968
ブリッグズ『イングランド社会史』1983
ダワー『敗北を抱きしめて』1999
の3冊。

ゲイ『ワイマール文化』1968 、亀嶋庸一氏筆

それは大学だけではなかった。裁判官や官僚や軍部といった「古くからの権力の中心」も、ワイマール共和政それ自体を国内の社会主義勢力と外国勢力が敗戦に ともなって無理矢理ドイツに押しつけた体制として憎み、従来どおりインサイダーとしてアウトサイダーに参入をあくまでも排除し続けた。このように、ワイ マールは帝政時代ではアウトサイダーであったものがインサイダーとして活躍できた分野と、彼らを依然として拒み続けた分野とにはっきりわかれていたのである。(本書P.37)

この記述を眼にして、まさに敗戦後の日本そのままという感を深くした次第。その意味でこの日本においても「戦後文化」なる名著が必要と感じた。

ブリッグズ『イングランド社会史』1983  青木康氏筆
資本主義の《生い立ち》に興味がある当方としては、本書の、

第七章 革命の十七世紀 ― ピューリタン革命、王政復古、そして名誉革命
第八章 十八世紀のイングランド ― 富と権力と快楽の追求

に関心をそそられたし、ブリッグズのイングランド史を特徴づけるものは《対立》ではなく《調和》である、という姿勢にも興味を持った。

ダワー『敗北を抱きしめて』1999  三浦陽一氏筆
本書訳書が大部(そして結構高価)であることもあって、食指が鈍かったのだが、本書がまぎれもなく名著である(らしい)ことは三浦氏の筆により納得できた。そして、ゲイ『ワイマール文化』に匹敵する日本の「戦後文化」の名著がまさしく本書である(らしい)ことにも気付かざるを得なかった。これは読まずばなるまい、いうところである。

本書のアマゾンレビューで知ったが、本書に敗戦時エリート層の国有財産の広範な略奪行為についての記述もあるとのこと。仄聞はしていたが、本書に堂々とそのことが書いてあると知り、一層読む気になったことも付言しておこう。

樺山紘一編著『新・現代歴史学の名著』2010年中公新書
目次
ニーダム『中国の科学と文明』1954-
梅棹忠夫『文明の生態史観』1967
ゲイ『ワイマール文化』1968
ウォーラーステイン『近代世界システム』1974-
ル・ロワ・ラデュリ『モンタイユー』1975
ギンズブルグ『チーズとうじ虫』1978
ル・ゴフ『もうひとつの中世のために』1977
サイード『オリエンタリズム』1978
網野善彦『無縁・公界・楽』1978『日本中世の非農業民と天皇』1984
アンダーソン『定本想像の共同体』1983
ブリッグズ『イングランド社会史』1983
ノラ編『記憶の場』1984-92
クールズ『ファロスの王国』1985
オブライエン『帝国主義と工業化』1988-1998
コッカ『歴史と啓蒙』1989
メドヴェージェフ『1917年のロシア革命』1997
ダワー『敗北を抱きしめて』1999
速水融編著『近代移行期の人口と歴史』2002『近代移行期の家族と歴史』2002

■旧篇採録書リスト
樺山紘一編著『現代歴史学の名著 』1989年中公新書

津田左右吉『文学に現はれたる我が国民思想の研究
ホイジンガ『中世の秋
パウア『中世に生きる人々
ヒンツェ『身分制議会の起源と発展
チャイルド『文明の起源
ピレンヌ『ヨーロッパ世界の誕生
ブロック『封建社会
ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論
ブルンナー『ラントとヘルシャフト
大塚久雄『近代欧州経済史序説
高橋幸八郎『市民革命の構造
石母田正『中世的世界の形成
コリングウッド『歴史の観念
ブローデル『フェリペ2世時代の地中海と地中海世界
カー『ボリシェヴィキ革命 』『一国社会主義
エリクソン『青年ルター
ホブズボーム『反抗の原初形態
テイラー『第二次世界大戦の起源
フーコー『言葉と物
ヴェントゥーリ『啓蒙のユートピアと改革
ウィリアムズ『コロンブスからカストロまで

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