日本社会の構造転換(3)
弊ブログの「日本社会の構造転換(1960年革命)」に新しいコメントを頂いた。
日本近代の人口成長には、
①1866年から1907年まで関税自主権喪失 → 平均寿命の低下
②1921年(大正10年)に上水道の塩素殺菌開始 → 乳幼児死亡率低下
以上の2点が関連する。
簡略に回答を試みる。
①は、その因果関係が当方には不明。
②は、いろいろと問題点がありそうだ。
以下の理由で、上水道の塩素消毒開始と戦間期の乳幼児死亡率低下に直接的な因果関係はあるとは思えない。
1)乳幼児死亡率の低下は、1917(大正6年)年頃から始まっている。
2)水道はコストのかかる都市インフラであり、都市部人口と相関する。
3)日本における上水道普及率は1950年で、26.2%。(厚生労働省データ)
4)戦前の水道は水源の汚染が少ないため、緩速濾過がほとんどであり、それでも比較的高い安全度を保っていた。
5)塩素消毒は、1921年(大正10年)に東京市と大阪市で始まった(東京都水道局)とある。しかし、塩素の常時注入はやはり水の味に問題があるため避けられ、夏場、伝染病流行時に実施されることが多かった。
6)塩素の常時大量注入は、敗戦後の連合国占領軍向け水道からGHQの命令で始まった。それは米国で普及している急速濾過方式(塩素消毒)を踏襲。戦後の水道行政はそれを引き継ぐ。
7) 2)、3)、4)から、都市部の高い乳幼児死亡率は、近代化に伴う都市人口増加に対して、上水道の普及が遅れた事に一因があると考えられる。したがって、引用資料における「上水道の普及でかえって乳幼児死亡率は高まり、それが塩素消毒開始によって急減した」という説明は、第一に因果関係が全く逆であり、第二にデータ的に根拠薄弱である。(20151006追記)
〔参照〕
1)西川・尾高・斎藤編著『日本経済の200年』日本評論社(1996年)
3)下記グラフ
4)5)6) 【25】水の消毒
5)トピック第7回 消毒 | 水源・水質 | 東京都水道局
※上水道の普及率推移をグラフ化してみる(2015年)(最新) - ガベージニュース、より
■参照
日本社会の構造転換
日本社会の構造転換(続)
日本社会の構造転換(4)
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コメント
ヒルネスキー 様
コメント、ありがとうございます。
別記事で応答する予定です。急に身辺多忙となったため今しばらくお待ちください。
投稿: renqing | 2015年10月27日 (火) 10時43分
返事遅くてすみません。
②の結論にはグウの音も出ません……。
①については関税自主権が無い事で国内で第二次産業従事者として働く選択が取り辛かった為に就労が第一次産業か第三次産業(大部分が前者)に偏ったのが原因なのではと思ったのです。
(西欧で牛の)舎飼いが始まったのが産業革命以後という事を知ったので農家の大家族が始まったのも明治維新以後なのではと連想しました(考えが纏まったのは今です、すみません)。
構造転換3のグラフを今見直すと日清戦争後に下がりだした普通出生率が日露戦争で再び上がりだしたのが不思議です。
【石原慎太郎】LET IT GOな政治家たち【橋下徹】
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12973/1430933248/
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/otaku/12973/1433173117/
二つ目のスレッドには【幕末〜】 THE SANDS IN THE WIND 【〜東日本大震災】(嘘予告)と江戸時代の刑罰実施の実情と「幕府の統治能力は1810年頃から失われだしていた?」という推測が書かれてました。
物語としても面白かったです。
投稿: ヒルネスキー | 2015年10月19日 (月) 07時06分