日本社会の構造転換(4)
ヒルネスキー様の、日本社会の構造転換(3)に頂いたコメントに10か月ぶりに応答します。
ヒルネスキー様再コメント(2015年10月19日 (月) 07時06分)
返事遅くてすみません。
②の結論にはグウの音も出ません……。
①については関税自主権が無い事で国内で第二次産業従事者として働く選択が取り辛かった為に就労が第一次産業か第三次産業(大部分が前者)に偏ったのが原因なのではと思ったのです。
(西欧で牛の)舎飼いが始まったのが産業革命以後という事を知ったので農家の大家族が始まったのも明治維新以後なのではと連想しました(考えが纏まったのは今です、すみません)。
構造転換3のグラフを今見直すと日清戦争後に下がりだした普通出生率が日露戦争で再び上がりだしたのが不思議です。
応答1)
1866年から1911年まで関税自主権喪失 → 第二次産業(製造業部門)で労働人口を吸収できないため、第一次産業(農業部門)第三次産業(商業サービス部門)、就中、前者に労働人口が偏った → 平均寿命の低下
まず、関税自主権喪失期に平均寿命(0歳時平均余命)が低下したか、をデータで見てみます。
総務省「日本の長期統計系列」でザッと見ます。
0歳児平均余命(明治24年~平成15年)
なにしろ、幕末~維新期にかけてに信頼できるデータがないので仕方ありませんが、0歳児平均余命は、1891--1898~1899--1903は、微増、1899--1903~1909--1913は微減、1909--1913~1921--1925は大幅減、となっています。大正時代は、世界的なスペイン風邪(インフルエンザ)が主因です。どちらかと言えば、関税自主権喪失期は平均余命は伸びていると考えられます。
また、因果関係を考えると、ヒルネスキー様のアイデアは、
「関税自主権喪失→製造業部門は未成熟あるいは縮小→労働者の所得機会喪失→寿命の縮小」
ということなのでしょう。しかし、幕末から明治期における、外貨獲得部門は、初期のお茶、陶磁器、その後長く生糸(製糸業)で、どちらかというと現代でいうところの、発展途上国型の貿易構造でした。したがって、いわゆる鉱工業としての製造業そのものが産業として未熟でしたので、ご想像の因果関係は強くないと考えられます。生糸の産地などは、対欧米輸出でかなり潤ったようです。また、英国の強大な国際競争力にさらされたと考えられる綿工業(綿糸・綿布製造業)では、綿糸・綿布の需要構造(英・細糸、日・太糸)の違い、日本の気候風土にフィットした徳川期から続く明治日本の庶民の衣服嗜好が、西洋化(洋装化)するまでは、大問題になっていなかったと現在考えられています。
応答2)
農家の家族数の変化(世帯規模の変化)関して、牛(あるいは家畜)の舎飼いとの関係は私には不明です。ただ、近年の歴史人口学の見解では、徳川期に一貫して世帯規模は縮小しており、前近代の西欧での8~9人という世帯規模に比較すると、むしろ徳川期のそれは4、5人~6、7人で小さく、子沢山ではなかったようです。出生率は明治期に上昇したようですが、それが世帯規模に正のフィードバックをするのは戦間期からで、乳幼児死亡率の低下で死亡率全体が低下したにも関わらず、総動員体制イデオロギーのもと、「産めよ増やせよ」政策によってドライブされたことが一因でしょう。私の母方の祖母は10人(早世した子も含め)産んでいます。総務庁のデータから出生率と死亡率のグラフを掲げておきます。
出生率及び死亡率(明治5年~平成16年)
上記のデータからすると、ヒルネスキー様のご指摘の
「日清戦争後(1894)に下がりだした普通出生率が日露戦争(1904)で再び上がりだした」
という事実は観察し難いようです。
以上、遅ればせながら応答とさせて頂きます。
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