出来事と帰責
「豊洲問題」はこのところ、マスコミの好餌となっている。
事件や事故は、過ちを犯しがちな人間の常である。その際、我々がまず念頭に置かなければならない事は、同じ過ちが今後できるだけ起こらないようにすることであろう。何故なら、愚かさが人間という生き物の免れ得ない属性なら、せめてまちがいを二度しないように明日から生きることが人間の賢さの証明だからだ。
あやまちを再び起こさないために最も重要なことは何か。それは「その出来事はいったい何だったのか」ということ、すなわち事実の全貌を可能な限り詳らかにした上で総括し、それに「名を付す」ことである。まず「何が what?」を問うことだ。
しかしここで「誰が who?」にアドレナリンが奔流してしまうのがホモサピエンスである。これは、定期テストで最悪の点数を持ち帰った我が子をいきなり叱りつけてしまう母親でも、税金の無駄遣いを知った納税者である怒り心頭の都民でも同じだ。人は、事実の検証より、犯人探しによりエキサイトする。人間は「事実」なぞより「人間」が大好きだからだ。
人間の愚かさは情念に比例し、理性に反比例する。一方、人間が何ごとかを成し遂げる驚くべきエネルギーは、理性に反比例し、情念に比例する。古来、このバランスが難しい。
人間は無力ではない、愚かなだけである。残念ながら、と付言すべきだろうか。
※参照 → I love ‘I love a Fool’
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コメント
関 様
赤松小三郎関連の講演のご案内、ありがとうございます。生憎、土曜日の午後は都合が悪く、今回は伺えません。残念です。
赤松小三郎のご著書を出されるとのこと。それは素晴らしい。期待しております。謝辞に記して頂けるなどとは光栄の至り。どうぞ、お願いします。
森林生態学者の関様に、歴史がらみで、私の徳川文明史の著述の先を越されてしまい、内心忸怩たるものがありますが・・・。これは私の精進不足の致すところですね。今回の悔しさを発条にして、大向こうを唸らせるものを今度は私が上梓することで、関様に追いつきたいと存じます。
投稿: renqing | 2016年10月 2日 (日) 00時49分
renqingさま
本年度も赤松小三郎研究会主催で講演会をいたします。赤松小三郎が徳川政権にも建白書を出していたという新史料を発見された桐野作人さんの講演です。「薩摩から見た赤松小三郎」というタイトルです。もしご都合つくようでしたらどうぞ。
日時:平成28年10月15日(土)受付開始14:00 講演14:30~16:00
会場:文京区民センター 3階 A-会議室
詳細は以下です。
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/7e0fe2bab0f742ad2be2f18d76f7fe48
別件ですが、もうじき私も赤松小三郎についての本を出版予定です。renqingさんにいろいろと教えていただいたことも本に盛り込んでおり、謝辞でrenqingさまに御礼を申し上げさせていただきたいと考えております。よろしいでしょうか?
投稿: 関 | 2016年10月 1日 (土) 12時39分