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2017年8月17日 (木)

九鬼周造の「因果的偶然」

 表題の語彙を以下の文から知った。

古川雄嗣「「自然支配」と「自然随順」のあいだ」,下記のPP.148-163に所収
『現代思想』総特集「九鬼周造 偶然・いき・時間」2017年/1月臨時増刊号

 九鬼周造『偶然性の問題』1935年で使用されている語彙で、九鬼の興味深い、ボックス・ダイヤグラム*(必然⇔偶然、因果的⇔目的的)とともに引かれている。

*私流ならこういうマトリックスを作るところ。  

 

 

 
 

必然的

 
 

偶然的

 
 

因果的

 
 

因果的必然性

 
 

因果的偶然性

 
 

目的的

 
 

目的的必然性

 
 

目的的偶然性

 

 この「因果的偶然」概念は、Max Weberのいう「選択的親和性 Wahlverwandtschaften (Elective Affinities) 」と実質的に同じものだと思う。

 また、古川の論文の最後で、

・・・「自由」な道徳的実践が無限の反復によって「第二の自然」となった「習慣」であった・・・。(PP.162-3)

と述べている事態(ある行動が無限の反復によって《第二の自然》としての《習慣》となること)は、塩沢由典の複雑系理論における「人はなぜ習慣的に行動するか」と相即している。

 ということで思い付きを備忘として残しておくことにする。

〔参照1〕「選択的親和性」については下記の弊記事を参照。
1)Hume - Hayek conservatism の理論的欠陥 (3・結語)
2)歴史における発生と定着、あるいはモデルと模倣

〔参照2〕因果論を巡る時間については下記の弊記事を参照。
3)過去の擬似決定性と未来の選択可能性
4)決定論と善悪の彼岸

※この記事は、amazon.co.jp におけるこの冊子の優れたレビュー(佐野波布一氏)から想を得た。

〔参照〕弊記事
アリストテレス「詩学」Aristoteles, Peri poietikes (2)

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