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2017年10月23日 (月)

凝固点降下と文明史(3)

 《製鉄》のプロセスは、二段階に分けられる。

Ⅰ.酸化鉄を還元する。《酸化鉄 → 鉄+酸素》
Ⅱ.還元した《鉄》に炭素を含ませる、吸炭過程。

 炭素の含有率が高くなると、《鉄Fe》の硬度が増す。炭素含有率が低くなり「純鉄」に近づけば近づくほど、軟らかくなり粘性が増す。それを利用して、用途に応じた多様な性質を持った《鉄》が作られる。

《注意点1》 鉄鉱石がドロドロの液体状にならないと《還元》できない訳ではなく、鉄鉱石と石炭の混合物を1000℃くらいまであげると、鉄鉱石が固体のままでも《還元》できる。

《注意点2》 「鉄」の「吸炭」は、化合ではない。いわば、水に塩がとけている状態と同じで、混合しているだけ。これも、溶融する必要がない。固体のまま高温状態(1000℃前後)で「吸炭」する。

《注意点3》 炎は種類に応じて、温度が異なる。

キャンプファイヤー  →    1200℃から1400℃くらい
練炭や木炭の真っ赤になっている部分、アルコールランプ → 1000℃
ロウソクの外炎 → 1400℃
現代のガスストーブ、ガスコンロ、理科実験室のガスバーナー → 1700℃

 したがって、古代に製鉄技術はあるレベルまで発達したが、近世になるまで、溶融状態にして型に流し込む鋳鉄は、欧州、西アジアではできなかった。ただし、中国は、溶融銑鉄を紀元前後から作り出していた。

 今回の関連記事のソースは、主に以下。

永田和宏著『人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理』講談社ブルーバックス 2017年5月刊

〔参照〕本シリーズは完結しています。ご笑覧頂ければ幸甚。
凝固点降下と文明史(1)
凝固点降下と文明史(2)
凝固点降下と文明史(3)
凝固点降下と文明史(4)
凝固点降下と文明史(5/結)

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