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2018年2月19日 (月)

DLT( Distributed Ledger Technology )と華厳思想

 従来、ブロックチェーンと言われてきた技術は、近時、「分散型台帳技術 Distributed Ledger Technology ( DLT )」と呼ばれるようになってきています。その本質が、所有権データを分散型で管理する、というものだからです。

※An English translation of this article is available.
DLT( Distributed Ledger Technology ) and Kegon (華嚴 Huáyán)Thought: 本に溺れたい

 ネットワーク内のすべての取引参加者は同じ帳簿を持っていて、取引が実行され、帳簿の変更が合意されると、その取引情報はすべての参加者に送られ、すべての帳簿が書き換えられます。これはまさに、「どの個物の中にも全体」が存在するという、華厳の思想そのものと言えそうです。

 これはまた、「知識」や「言語」の存在形式と同型です。日本語という言語の知識(あるいは日本語辞書)は日本人なら誰でも持っています。そういう個人の個々の頭の中にある日本語の辞書は、新しい日本語(このDLTのようなもの)や新しい意味が社会の各所に浸透するに従い、新しい取引情報によって分散型台帳が書き換えられるように、個々人の頭の中の日本語の知識も改訂されていきます。

 唯名論者は、存在者なるものは「普遍」ではなく、「個物」のみである、と言うのですが、その「個物」たちすべてに「普遍」が分散所有されているのだとすれば、普遍も個物とともに存在者と言えそうな気がします。

 ということで、本日の備忘録は資源枯渇でおしまい。

〔参照〕
1)小さな知識と大きな知識

2)《経済成長》から《知識成長》へ(後編)

3)言葉は意味を孕んでいる

4)中島真志 著『アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』2017年10月新潮社

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