「グライダー人間」から「飛行機人間」へ?/ From "Glider Person" to "Airplane Person"?
学校教育が作っているのは「グライダー人間」であって、コンピューター(今ならAI)の出現以降は、「グライダー人間」は不要となる。今後は、「飛行機人間」が必要で、必要な知的スキルは、「暗記する」スキルではなく、「忘れる」スキルだ、と。
この三十年間、日本の教育はなんら変わっていない、ということの帰結が、「マジで、今、何を食べたいのかわからない」高偏差値学生の大量生産、というミゼラブルな現状なのでしょう。
立身出世の階梯を、他人より、いち早く駆け上がる、という心性が広く一般社会全体に拡散するのは、年々人口規模が拡大し、hierarchyのピラミッドの階層が未来に向けてどんどん多層化、複雑化する近代社会のみです。すなわち、「成長社会」です。
ところが、現実の日本の総人口は、50年後に1/3減の9000万人、100年後には、2/3減の4000万人です。成長はおろか、急激に収縮しています。日本の近代人口成長が、徳川末期(19世紀半ば)3500万人⇒昭和初期6000万人(20世紀初期)⇒昭和42年1億人(20世紀半ば)、です。従いまして、凄まじい勢いで「坂の上の雲」を突き抜け、ピークに達した山を今度はまた、同じ勢いで駆け下りている、という様子が近現代日本の人口動態です。
※上掲の2つのグラフともに、3 人口減少社会の接近: 子ども・子育て本部 - 内閣府
そんな社会が、「立身出世」信仰と「screening」の近代教育システム、という制度パッケージと齟齬をきたさない訳がない。むしろ、破綻して当りまえです。
安倍自民政権がヤバいのは、国家主義だからというより、明治維新の理想、の美名の下、彼らの脳内選択肢に、「現状の拡大、or さもなくばその維持」しか存在しない、という定見のなさに依ります。米国の植民地総督でしかないPM安倍にはそれ以外ないのは、ある意味、合理的ではあります。
日本のold fashion な高等教育システムに比べれば、「地あたまが良い」子なら、英米系の高等教育を受けようとするでしょうが、アングロサクソンも知的中心部には、近代の夢魔、「growth」が相も変わらず盤踞していますから、かつてのフルブライト奨学生と同じく、より強化された米英の走狗になることも危惧され、嫌になります。
| 固定リンク
「歴史と人口」カテゴリの記事
- 人口縮小社会:一つの帰結(2022.12.09)
- 飯田哲也「複合危機とエネルギーの未来」岩波書店『世界』No.952(2022年1月号)(2022.01.10)
- 「自給」と「自然エネルギー」を考える/ Thinking about "self-sufficiency" and "natural energy"(2022.01.03)
- 書評Ⅱ:宇野重規著『トクヴィル 平等と不平等の理論家』2019年5月講談社学術文庫(2021.07.19)
- 書評Ⅰ:宇野重規著『トクヴィル 平等と不平等の理論家』2019年5月講談社学術文庫(2021.07.19)
「学習理論」カテゴリの記事
- Failure is a part of learning / 失敗は学びの一部である(2022.11.12)
- 心の扉の開き方/ How to open the door to the heart(2022.05.05)
- The Body as Empirical Rationalist(2022.04.25)
- 経験的合理主義者としての身体(2022.04.25)
- 日本の教育システムの硬直性は「儒教」文化に起因するか?(2021.05.18)
コメント