Peak oil 後の世界
上記資料は、図録▽原油価格の動向(社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune樣より)
21世紀に入り、明らかに原油価格の動向に変化が訪れています。もう、cheap oil、easy oil の時代は終息に向かっている模様です。
現代では、素原材料から、様々な動力源まで、石油製品が使用されています。だから、あらゆる商品に、直接間接に石油がどこかで投入されています。したがいまして、物価が全般的に上昇することは動かないと思われます。
1)内燃機関の燃料価格の上昇
石油の最も特徴的なのは、常温常圧下で液体であることです。これは輸送機械用の動力源として最適な性質です。つまり、この面では石油の代替資源はない、と考えておくべきです。
とすると、石油の希少資源化で、まず運営、運行ができなくなるのは、ロケットです。軍事用ミサイルが飛ばせなくなるのは結構ですが、現代社会にかなりダメージになるのは、商業用人工衛星が難しくなることでしょう。BSテレビが見れなくなっても、有線という手があるのでどうとうこともないかもですが、車のナビゲーションは使えなくなります。移動通信、携帯電話は地上局の増設で対応可能でしょうか。国際通信ではコストは押し上げるでしょう。
次に、飛行機は使えなくなります。石炭ではジャンボなどで飛ばせませんし、充電器を積んで電力旅客機で、などというのは妄想の世界の話です。
自動車、特に、自家用車の所有はかなり制限されるでしょう。金持ちしか乗れないものになります。リッター1000円のガソリンなんて使ってられませんからね。自動車のプラスチック使用も既に抜き差しならないようになってますから、その点からも車体そのものの高価格化は不可避です。私ら庶民は、乗り合いタクシー、バス、鉄道、といったものに戻らざるを得ないでしょう。その一方で、歩くことが重要になります。
2)素材価格の上昇
無料のレジ袋は存在できません。化学繊維は私たちの生活を多様にしていますが、化学繊維の混紡も難しくなるので、純綿製品や、麻や毛との混紡製品になるでしょうか。
PCなどのOA機械は、インターフェース部分から中身まで、ありとあらゆる部分でプラスチックが使用されていますので、高価格化は避けられないでしょう。パーソナルコンピュータは自家用車と同じように、使える人たちは限定されそうです。
生活の身の回りの小道具は、石油素材製品のオンパレードなので、ここら辺は激減することになります。いうなれば、「石炭から石油へ」のエネルギー革命前の、1950年代の日本のような生活風景に戻らざるを得なくなります。プラスチックトレイは消えて、昔の肉屋さんの量り売りで、竹皮でくるんでくれる、ようなイメージです。魚屋さんで一尾を捌いて切り身におろしてもらうとか。でも、今時、新聞紙もないので、何で外側を包むことになるでょうか。お豆腐も、自分で金属製のボールを持参することになります。
3)電力は?
現在のような、中央集中発電は、火力発電はアウトで、原子力発電も、結局安価な石油におんぶにだっこなので、これもアウト。良質で比較的安価なウランも実はあまり残っていません。水力発電なら可能ですが、そもそも巨大ダムを作るときの建設用機械の動力源の石油がコスト上昇で、実質的に困難でしょう。すると、なんだかんだで、中央集中発電から、地域分散発電に切り替えざるを得ない。送電ロスも避けなければなりません。電力も地産地消です。大人口を抱える大都市はシステムとして維持できそうもありません。人々の人口移動を法的に規制することになると嫌ですね。人口がうまく分散するインセンティブシステムを構築する必要がありそうです。
4)石炭への逆戻り?
石炭は機械動力源としては、外燃機関でしかありませんから、蒸気機関が最新式で再来するでしょう。そこら中の工場から、煙がもくもくでることになりそうです。環境保護のためのフィルター装置はつけるでしょうが。
このへんで、今晩の想像力は涸渇しましたので、機会をみてまた書くことにします。
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