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2019年4月15日 (月)

別世界の消息

 柳田国男は、「天然の禁色(きんじき)」という造語で、この世のものとは思われない色は、かつて「別世界の消息」であったと語ります。

 つまり、我々は色に貧しかったといふよりも、強ひて富まうとしなかつた形跡があるのである。・・・。色の存在は最初一つとして天然から学び知らなかつたものは無いのであるが、其中には明らかに永く留まつて変わらぬものと、現滅の常なきものとの二種があつた。地上に属するものとしては物の花、秋の紅葉も春夏の若緑も、美しいものはすべて移り動くことを法則として居た。蝶や小鳥の翼の色の中には、しばしば人間の企て及ばざるものがきらめていて居た故に、古くは其来去を以て別世界の消息の如くにも解して居たのである。
柳田国男『明治大正史 世相篇』東洋文庫No.105、平凡社 、平凡社、p.9

 俳諧寺一茶の有名な発句に「手向くるやむしりたがりし赤い花」といふのがある。即ち可愛い小児でさへも仏になる迄は此赤い花を取つて与えられなかったのである。
柳田国男『明治大正史 世相篇』東洋文庫No.105、平凡社、p.13

 つまり、鮮烈な色を持つ花はこの世のものではなく、「別世界の消息」であり、だからこそ、可愛い小児でさへもむしってならなかったのだ、と柳田は言うのです。

 ある日ある時、キラリと私たちの世界に顕現する「別世界の消息」を、ドイツの詩人はこう表現します。

 ノヴァーリス(Novalis, 1772-1801)、「断章」より

Alles Sichtbare haftet am Unsichtbaren
– das Hörbare am Unhörbaren
– das Fühlbare am Unfühlbaren.
Vielleicht das Denkbare am Undenkbaren – .

2120 Traktat vom Licht
Neue Fragmente
Projekt Gutenberg-DE - SPIEGEL ONLINE

「すべての見えるものは見えないものに触れている
聞こえるものは聞こえないものに
感じられるものは感じられないものに
おそらく考えられるものは考えられないものに」

※柳田については、見田宗介『社会学入門』岩波新書(2006年) 、pp.50-5、参照。
※ノヴァーリスについては、本ブログ記事参照。
存在するものは「知り得るもの」だけではない


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