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2019年4月10日 (水)

柳田国男の Conservative political theory

 柳田はこの「天然の禁色」(柳田当該書p.7)の社会心理の特質として、二つのことを挙げている。第一に自発的なコントロール、「特に制度を立てて禁止された」(柳田p.8)抑制ではないということ。第二に感覚的なコントロール、「必ずしも計算の結果ではなく」(柳田p.8)ということ。

 柳田がその生涯で、中央官僚として赫々たる地位をなげうって民俗学の研究に専心することとしたのも、ほんとうによい社会を形成してゆく基盤の力を、「法令で社会制度を造れるかのごとく誤認する」(柳田p.294)権力の手法ではなく、民衆自身のこの自発的、感覚的な心性の内に見出そうとしたからだった。
見田宗介『社会学入門』岩波新書(2006年)、pp.58-9

 上記は、本ブログでいう、Hume-Hayek conservatism とほぼ同型の政治理論と言ってよいと思います。その結果生み出される政治秩序を、Humeなら convention(習律、黙契) と呼び、Hayek なら artifacts(人為の所産だが、意図的ではない秩序)と呼びます。

 この理論的観点から、近世国学の思想系譜を見直す必要があるでしょう。また、1868年の「維新」はその名称からして、革命主義、設計主義(construtivism)であり、反伝統的なものでした。そもそも「法令で社会制度を造れるかのごとく誤認する」arrogant な者たちが、伝統主義者である訳がありません。

柳田からの引用頁数は全て、下記より。
柳田国男『明治大正史 世相篇』東洋文庫No.105、平凡社

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