別世界の消息(承前)
前記事に関して、一言。
ノヴァーリスは(といってもノヴァーリスことはあまりよく知らないのですが)、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)のボーダーに生き、死んだ文学者でしょう。
しかし、柳田は当初文学者を志向しながらも、結局、(社会/人文)科学者の立場(広い意味での scientist)を選び、そこに留まりながら、方法論によって異世界に気象用ラジオゾンデを下ろし探索した。ここがノヴァーリスとの違いです。その柳田の方法論は、Weber の創出した「動機の意味理解」的方法そのものと言えます。その歴史社会学の傑作が、柳田国男『明治大正史 世相篇』昭和6年(1931)です。
以上、書きながら思いましたが、柳田国男は、 Max Weber に比肩しうる学者です。日本というフィールドに自己限定していますが、そこでなし得たことはすごいこと、であるように思えます。
| 固定リンク
「Max Weber」カテゴリの記事
- ライア・グリーンフェルド(Liah Greenfeld)"ナショナリズム三部作”(2022.04.28)
- Liah Greenfeld's "Trilogy of Nationalism"(2022.04.28)
- 「アベノマスク」とは何だったのか(2021.10.27)
- 「陰謀論」のラベリング効果(2) / The labeling effect of "conspiracy theories": 本に溺れたい(2021.09.28)
- Historical court as abduction(アブダクションとしての歴史法廷)(2021.05.11)
「社会科学方法論」カテゴリの記事
- 《知識の進化》と《進化の知識》:「ノイラートの船」と「進化のブリコラージュ」(2022.03.25)
- Plato is our friend, but we are not Plato's friends /プラトンは我々の友だが、我々はプラトンの友ではない(2022.03.16)
- What is the origin of the irrationality inherent in Western rationalism?(2022.02.04)
- 欧米的合理主義のなかに内在する不合理は何に由来するのか(1)(2022.02.04)
- 過去は「anchor」である/ The past is an "anchor"(2021.12.31)
「柳田国男」カテゴリの記事
- 柄谷行人著『世界史の実験』2019年2月岩波新書(2019.07.01)
- 別世界の消息(承前)(2019.04.15)
- 別世界の消息(2019.04.15)
- 感覚の階梯、あるいは改訂(2019.04.13)
- 柳田国男の Conservative political theory(2019.04.10)
コメント