松田卓也教授の最終定理
「飛行機がなぜ飛ぶか」分からないって本当?:間違った説明や風説はなぜ広がるのか/日経ビジネス電子版
というインタビュー記事に、松田卓也神戸大学名誉教授が《発見》された深遠なる定理が述べられています。
最終定理「人間には理性は無い」
より詳しく言うと、以下のようになります。
第1定理「人は自分の意見は主張する。相手の意見は聞かない」
第2定理「サルは反省するが人間は反省しない」
最終定理「人間には理性は無い」
※補助定理「人間は理性が1割、感性が9割」
これは、一代の天才、我が畏敬する David Hume が、三百年前(当時28歳)に洞察した真理、そのものです。
Reason is, and ought only to be the slave of the passions, and can never pretend to any other office than to serve and obey them.
A Treatise of Human Nature, by David Hume (1st ed. 1739)
Book II. Of the Passions Sect.III. Of the Influencing Motives of the Will
理知(理性)は情念の奴隷であり、且つただ奴隷であるべきである。換言すれば、情緒に奉仕し服従する以上の何らかの役目を敢えて僭望することは決してできないのである。
ヒューム『人性論(三)』岩波文庫1951年大槻春彦訳、p.205
ただ、松田氏がインタビュー記事の最後で、他の論者の著書を引き合いに出しながら、《非合理性 irrational》と《限定合理性 bounded rationality、弊ブログでの表現は「合理性の限界」》を同一視しているように見受けられるのは、ちょっと捨て置く訳にはいかないので、弊ブログで別途記事化します。
また、松田氏がある意味性懲りもなく、「シンギュラリティ Singularity 」信者であらせられることには、かなり「危うさ」を感じます。
20世紀における爆発的な、産業(industry)の労働生産性上昇は、テクノロジーの発展に負うのではなく、その大部分は、打ち出の小槌である「石油」の巨大油田が次々と発見されたことによります。従いまして、After Peak Oil が現実となってしまった21世紀において、シンギュラリティの到来は蜃気楼となってしまいました。
シンギュラリティを始めとした、テクノカルト(techno-cult 技術信仰)は、石油文明の徒花に過ぎません。残念ながら。松田名誉教授におかれても、「理性は情念の奴隷である」が真理であることが再び証明されてしまったというべきなのでしょう。自戒としたいと思います。
※参照 憎しみについて: 本に溺れたい
※一見正しそうで実は?、の具体例については、下記参照。
セコイアはいかにして水を100m以上持ち上げるか?: 本に溺れたい
あのぉー、まちがってる(みたいな)んですけど・・: 本に溺れたい
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