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2019年7月 1日 (月)

柄谷行人著『世界史の実験』2019年2月岩波新書

 本書で私が少し驚いたのは、著者が本書第一部Ⅰで紹介している、
柳田国男「實驗の史學」昭和十年十二月、日本民俗學研究
でした。

 というのも、弊ブログ記事で、柳田のこの文献を知らないままで、私は歴史学方法論として「実験歴史学」というタームとその実践例を本年三月に記事として書いていたからです。

 ただ、第一部で生彩を放っていたのは、Ⅱにおける、島崎藤村と父・正樹、柳田国男と父・松岡操(約齋)という、ともに平田派国学の神官を父に持つ二組の親子を巡る批評でした。

 第二部は、面白いトピックが幾つも列挙されていますが、いま一つ取り止めがなく、話の焦点がぼやけてしまっている印象です。

 本書帯に「『世界史の構造』後の新たな到達点」とありますが、《到達点》には少し無理がありそうです。著者の頭の中で、今ごった返している話題、《通過点》というところではないでしょうか。第一部のⅠでもⅡでもよいので、拡充して一冊に仕上げるべきだったと思います。

 個人的には、八十四年前の柳田の「實驗の史學」という小さな論文のほうが、本書全体よりも、正直、知的好奇心を刺激されました。

柄谷行人著『世界史の実験』2019年2月岩波新書
目次
第一部 実験の史学をめぐって
 Ⅰ柳田国男論と私
 Ⅱ実験の文学批評
第二部 山人から見る世界史
 1柳田国男のコギト
 2何か妖怪
 3山人の歴史学
 4原無縁と原遊動性
 5原父と原遊動性
 6武士と遊牧民
 7インドの山地民と武士
 8海上の道
 9山人の動物学―オオカミ
 10山人の宗教学―固有信仰
 11双系制と養子制
 12双系制と山姥
 13夫婦喧嘩の文化
 14歴史意識の古層
あとがき

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