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2019年8月 6日 (火)

悩むことは迷うことであり、考えることは試すことだ。悩まず、考えよ

 巷では、渋野日向子選手の全英女子オープン(Women's British Open)優勝の話題で持ち切りです。かく言う私も、最終ホールの渋野さんのバーディーパットとその瞬間のガッツポーズの動画を、幾度も再生してしまいました(笑)。

 ネット上のコメントで、最も納得がいき、感銘さえ受けたのは、岡本綾子氏の下記の記事でした。

岡本綾子「特に褒めたい点が二点あります」 渋野の偉業を独自の視点で分析(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

 この中での、「褒めたい二つの点」は、直接、記事をお読みください。私はゴルフ経験は皆無なので、岡本さんの指摘に、なるほどなぁ、と感心するばかり。さすがにご自身が、同じ修羅場を幾度も潜り、メジャー制覇に手が届きそうで、届かなかった方の言葉と思えます。しかし、私が感銘を受けたのは別の箇所です。

 一つは、「クラブを置いたときに初めて「私、メジャーに勝ったんだな」と思い返せばいい。今日からまた一プロゴルファー、渋野日向子としてやっていかないと周りにつぶされてしまいます。」という箇所。文中の「クラブを置いたとき」というのは、アスリートを引退したとき、との意味でしょう。重い言葉です。

 二つめは、コメント最後の部分にある、近時少し低迷気味の畑岡奈紗選手(岡本さんが嘱望している一人と想像されます)への下記の助言です。

アスリートにとって悩んでいいことなんて何もない。悩んでいるということは、進歩がないということ。悩むのではなく、考えないといけない。考えるということは、試すということ。だからいろいろな方法が見えてくるし、前を向いて練習することができる。「悩むな。考えろ」ですよ。

 この言葉に励まされる方は多いのではないでしょうか。私自身、この岡本さんのコメントに、PC画面に向かって「師匠、ありがとう。」と思わず叫んでしまいました(大笑)。類まれなスポーツ知性と的確な言葉、そして愛を持つ偉大なコーチでもある、と思います。


 最後に私の雑駁な感想を。とにかく、準優勝したリゼット・サラス選手や、モーガン・プレッセル選手、アシュリー・ブハイ選手といった欧米系のプレーヤーの比べると、渋野さんの体の横サイズが三分の一ぐらいというのはブッ魂消ました。しかし、渋野さんも鍛えられていて、筋肉のバランスのとれた「強い」身体能力を持つと伺われました。相対的にスリムですが、とてもとても華奢とはいえないがっちりした体躯を持つようです。それは下記の記事の、小中高とソフトボールで、エースで四番と活躍していた時に培われたこと、も大きいですが、ご両親がともに元陸上投擲選手という、恵まれたパワー系の遺伝子を持つこともやはりかなり大きいと思います。筋肉にはパワー系とスピード系、瞬発力系と持久力系の違いがあり、渋野さんは、そのうちのパワー系と瞬発力系の能力を元来遺伝されていると思います。ソフトボールで鍛えられたのは、四日間戦い抜く体力とか、気持ちの切り替えという側面でしょう。

 岡本さんの「迷うな。考えよ」で思い出すのは三人のトップ・アスリートです。1988年の全米プロゴルフ選手権3位の後、スウィング改造で低迷した中島常幸、2010年広州アジア大会で100、200m二冠に輝いた後、スパイク改良で混迷した福島千里、2012年ドイツ・ドルトムントからイングランド・マンチェスターユナイテッドに移籍後低迷した香川真司、の三人です。

 男子ゴルフの中島は、メジャーで勝てるスウィングを求めて従来の自分の精密機械とまで形容されたゴルフのストロングポイントを見失いました。史上初のアジア大会二冠女王福島千里は、オリンピックで勝つために新スパイクを求め結局自分の走りを見失い失速。フットボール香川は、自分の肉体をブンデスからプレミア仕様に切り替えるため筋力強化に向かい、欧州選手にはない身体の俊敏で柔軟な筋力を失いその強さを消してしまいました。ともに、「考える」つもりで、結果として「悩み」「迷った」ように感じます。トップ・アスリートの身体は、精密機械なのでしょう。一度チューニングの方向を誤ると出口が見えなくなる恐るべき世界としみじみ思います。

※1 全英V渋野日向子の原点はソフトボールで培った心と体…小学校時代に指導の岩道博志さん明かす(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

※2「できる can do 」とは「思い出す recall」こと: 本に溺れたい

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