退避勧告(evacuation advisory)
台風19号の影響は、ついに私にまで及んできました。生まれて初めて、天災で避難所にお世話になったのです。小学3年生の頃に、台風が来て後、水道が断水し、水の配給車から水を貰うのに、バケツや薬缶をもって列を作って待ったことがありましたが、それ以来の台風被災経験でした。
私の在所の自然地理は、明治終わり頃から昭和の前半にかけて、新田開発が行われた土地です。多摩川が近くを流れ、水利の便があったのでしょう。土地の低さから言って、むしろ元来は湿地帯だったのかも知れません。かつては、蛍も普通にいたらしいので。昭和の後期になり、減反政策のあおりで、折角開発した田は潰され、宅地として再開発された土地柄です。
自治体から配布される、ハザードマップによると、多摩川流域で2日間の総雨量が588mmになる想定最大規模では、ちょうど私のところが、1階の天井まで水浸しになる薄いレッドで覆われています。ただ、私は、多少高をくくっていて、ぎりぎりまで待っても、いざとなれば間に合うだろう、という姿勢でした。多摩川から反対方向に100m行くと河岸段丘があるので、その上にいけば、命だけは助かるだろうことは明らかだったからです。
お昼前に、自治体から避難準備・高齢者等退避開始が発令されました。15時過ぎに、ついに避難勧告が出ました。それでも、とぼけ続けて避難せずに済ませようかという考えが、一瞬頭をよぎりましたが、ここは素直に従うべきだろうと思い直し、そこから準備を開始して、予て避難所に指定されていた地域体育館に向かい、そのドアを潜ったのが、16:30です。
避難所で、一人一枚毛布を配られました。数時間後、水・缶詰のパン、などを配給されて時間を過ごすうち、夜半には外の雨はほぼ止んでいました。いつ帰れるのかとジリジリしていましたが、かなり経過したのち、帰宅の途につくことができました。
ようやく家に着き、軽食の補給に近所のコンビニに行くと、まだ閉鎖中です。その往復の間、「ゴォー」という小さな唸り声のようなものが聞こえます。これは、多摩川だな、と直感し、様子を伺いに近所の土手まで行ってみました。その真っ暗闇をスマホで撮ったのが、下記のほとんど真っ黒な画像です。次の日お昼に、また多摩川の土手に上り、同じ場所からとったのが下記の昼間の画像です。
真っ黒な画像では光が足らず鮮明には写りませんでしたが、昼間の写真の、土手の内側の草で緑の帯になっているところの下の部分が茶色になっているのがおわかりでしょうか。実は昨晩、その茶色の部分まで水が押し寄せていました。土手を乗り越えるまで残り、数mのところまで来ていたのです。どうりで、夜空の低い所から「ゴォー」と唸っていた訳です。昨夜は、それを目の当たりにして、「これはヤバかったな。」と素直に思いました。隣町では、多摩川の支流の堤防が決壊してかなりの被害が出ていたのを、今日のニュースで知りまして、他人事ではなかった、とゾッとしませんでした。たまたま運が良かっただけなのだと。
ここ何年か、台風や大雨の被害が大きくなっています。災害の強度が上がっているようです。おそらく温暖化と関連はあるのでしょう。温暖化が、地質学な時間スケールの気候変動、例えば太陽の黒点移動や地球の太陽公転軌道の微細な変動によるものであるにしろ、人類の産業活動の累積効果であるにしろ、地球全体の気候変化が荒っぽくなっていることと無関係と言い立てることは難しいだろうと思います。
現在の私たち大人より下の世代の人々は、石油涸渇と荒っぽくなる気候変動のダブルパンチを切り抜けなくてはならないようですし、この列島の次世代においては、さらにその上、列島の地質学的地震活動期をも乗り越えなければならないという三重の困難を生き抜く運命が待ち受けているようです。
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