原発、トイレのないマンション( Nuclear power generation is a condominium without a toilet.)
原発の燃え滓(かす)は、高レベル放射性廃棄物となり、ガラス固化体として最終処分に付されます。ちなみに、この「ガラス固化体」のサイズをご存知でしょうか。下記がそのサイズです。
10万年後の安全―「信頼」と「責任」の意味 | 「原子力発電のごみ」を知っていますか? サイト様より拝借
上記のサイズをもう一度、書き出しておきます。
ガラス固化体(1本あたり)
直径40cm
高さ1.3m
総重量500kg
100万キロワットの原発1基から年間で約26本のペースで産出されます。これまでの日本国内の使用済み総量は、ガラス固化体換算で、約25,000本です。これを埴輪よろしく、横にしてならべると、
1.3m×25000本=32.5km
となり、ほぼ山手線1周分(34.5km)に等しい。これは過去に生み出され、最終処分地を見つけられずに、各原発敷地内や青森で一時的に既に保管している分です。
では、これから生み出される分はどれくらいでしょうか。
運転中の原発 → 9基 総出力 913万kw → 年間 237本
停止、定期点検中 → 24基 総出力 2410万kw → 年間 627本
全てを稼働させると 合計 年間 864本
過去の蓄積分が25000本(山手線i1周分)でしたから、
25000本 ÷ 864本 = 約29年
となり、原子力村の人々を喜ばせるために、極力すべての原発を稼働させ続けるとすれば、2050年頃には、山手線の内回り+外回り分の「高レベル放射性廃棄物」をストックする破目になる計算です。
おそらく、その頃は、oil の涸渇が誰の眼にも明らかになっていると思われます。
仮に、oil が枯渇すれば、動力系のエネルギー資源がなくなることになります(石炭自動車は著しくエネルギー効率を落とします。ロケット、飛行機も運行は難しい。)ので、まず重量物の(陸上)輸送がままならなくなります。外洋や沿岸での海上輸送は帆船というほぼ完成した素晴らしいテクノロジーを復活させるという奥の手がありますが、内陸輸送は人馬に引き戻される可能性が高いです。自転車の引くリヤカーとか、でしょうか。運河を大々的に再掘削して内陸輸送に小型船舶を導入することも考えられますが、パワーショベルといった土木工事用のマシンも液体燃料であるoil がなくなると動かせなくなるので、地元民総出の人力になるのでしょう。AIのマシンやサーバーもそれ自身が相当の電力を消費しますので、希少・高価なoilが残っていたとしても、公共施設(病院、高齢者施設、学校、など)の動力系や制御系に優先的に電力を割り当てる必要があるでしょうから、営業用に大規模にAIを活用するとか、シンギュラリティ妄想などは、oil とともに雲散霧消する運命です。
そして大問題なのが、核のゴミ処理がにっちもさっちもいかなくなることです。というのも、ガソリン内燃機関利用の動力系がお釈迦になると、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の輸送・移動がまず不可能になるからです。フィンランドまで、人馬と帆船でガラス固化体を運ぶことは不可能でしょう。一方で、日本国内に捨てる場所はいまだに決まっていません。
まるで《ババ抜き》の様相を呈しています。このまま原発を稼働させ、行き場のない「核のゴミ」を溜め込み続けることは、法的にも、物理的にも参加できない子どもたちや未来世代に、この《ババ抜き》ゲームで、《ババ》を引かせることを意味します。
街ですれ違うベビーカーの中でたゆたう赤ん坊には、こんな物騒なものを片付けなければならない義務や責任はない、と思わざるを得ません。1万年後の人類にも、と言うべきでしょうか。
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