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2019年11月12日 (火)

新明正道『社会學史槪説』1954年岩波書店

 最近、復刊を知り、amazonに下記のレビューを投じました。御参照頂ければ幸いです。

新明正道『社会学史概説』2007年(岩波全書セレクション)

2019年11月12日
《社会思想史》概論の古典として

 本書の初版は1954年ですから、半世紀前の《社会学史》テキストということになります。一方、2007年11月22日にリプリントされていることから見ますと、その背景には、社会学史の「古典」として根強い支持があるようです。無論、《・・学史》としてのトピックの中心は、第二次大戦までとなり、20世紀後半の百花繚乱の観がある social theories には触れられていないのは致し方ありません。この点、本書を繙かれる際には、ご承知おき頂くほうがよいでしょう。

 門外漢の評者が、本書を手に取った理由は2点あります。西欧における、1)Marxism以前の《社会主義 socialism》の語源、2)ought to be としての《社会》観から、to be としての《社会》観への遷移過程、以上の2点を調べるためです。

 1)の関連では、Grotius 等の西欧初期近代の自然法思想が関連のあること、2)では、Sombart の Naturlehre der menschichen Gesellschaft(人間社会の自然論)という議論の存在を知ったのが収穫でした。

 碩学による重厚な「社会思想史」概論として私には助けになりました。その輝きが読み手によって変わってしまう、ある意味、正統派の academic な《古典》と賞すべき書だと思います。本書の価値を高めている丁寧な索引にも、著者の academician としての誠実さが偲ばれます。

 西欧思想史に関心のある向きは裨益するところ大でしょう。江湖にご一読をすすめます。

◆本書目次

第1章 社会学史について
1.社会学の現状
2.社会学史への要請
3.社会学史の構想
第2章 社会学の近代的起源
1.社会学の起源
2.社会学成立の背景
3.近代自然法論の成果
4.経験的社会論の成果
5.社会学の可能的性格
第3章 古典的社会学の成立
1.社会学の体系化へ
2.コントとフランス社会学
3.スペンサーとイギリス社会学
4.ドイツにおける社会学的諸企図
5.この時期における社会学の特性
第4章 社会学の世界的発展
1.世界的発展の社会的背景
2.イギリスにおける社会学の動向
3.フランスにおける社会学の動向
4.ドイツにおける社会学の動向
5.イタリー、ロシア社会学の動向
6.アメリカにおける社会学の動向
7.日本における社会学の動向
8.社会学の発展とその成果
第5章 現代における社会学の展開
1.1920年以後の社会学の動向
2.ヨーロッパにおける社会学の動向
3.アメリカ社会学の動向
4.日本における社会学の動向
5.現代における社会学の清算
参考文献
人名索引

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